サンフレッチェのアカデミーは、Jクラブの中で先駆けて全寮制を敷いたこともあって、育成の名門としての地位を確立していた。圭悟の先輩には、森崎和幸・浩司、駒野友一、高萩洋次郎、森脇良太、柏木陽介、槙野智章と、錚々たる顔ぶれが揃う。

「ジュニアユースでは自分が中3のとき、全国大会に1回も出られなかったんですよ。それでヤバいなと思っていたんですけど、無事に昇格できて。ユースはさらにレベルが高いんで、高3までまったく試合に出られなかったです」

　だが、右ウイングバックのポジションを掴んだ高校3年時、高円宮杯U-18プレミアリーグWESTで優勝し、チャンピオンシップでコンサドーレ札幌U-18を3-1と下して日本一を成し遂げた。

広島ユース時代の森保圭悟　©︎Kenzaburo Matsuoka/AFLO

　プレミアリーグWESTで対戦した京都サンガF.C. U-18には原川力（現セレッソ大阪）や高橋祐治（現柏レイソル）が、C大阪U-18には南野拓実（現モナコ）が、チャンピオンシップで戦った札幌U-18には荒野拓馬（現札幌）や奈良竜樹（現アビスパ福岡）がいた。

「みんな、うまかったですけど、それ以上にチームメイトが凄すぎたんで。ガクもそうですし、2個下の宮原和也（現名古屋グランパス）、川辺駿（現グラスホッパー・チューリッヒ）と、うまい選手ばかり。本当に仲間に恵まれましたね……あ、でも、対戦したなかで一番凄かったのは、（ポール・）ポグバ（笑）」

　高校3年時のイタリア遠征で対戦したマンチェスター・ユナイテッドユースの中心選手は、のちにフランス代表の主軸となるMFだった。

「ポグバは体が強いし、ボールは奪えないし、バケモノでしたね。（ジェシー・）リンガードもいて、小さいのに10番を付けていて、よく覚えているんですけど。当時はプレミアリーグで成功するような選手には思えなかった」

「自分はまだJリーグではやれないなって」

　Jクラブのアカデミーでは、実力の見極めと人数合わせを兼ねて、ユースの選手がトップチームの紅白戦に呼ばれることがある。

　圭悟も2011年、ミハイロ・ペトロヴィッチ率いるトップの練習に参加した。対戦するAチームの顔ぶれは佐藤寿人、青山敏弘、李忠成、森崎和……。ここでアピールできればよかったが、反対に現実を突きつけられた。

佐藤寿人や青山敏弘など、日本代表クラスの選手が揃っていたサンフレッチェ広島　©︎Mami Yamada

「自分はまだJリーグではやれないなって痛感しました。だから、その後、トップチームに昇格できないことを告げられても、『そりゃ、上がれないよね』っていう感じで、ショックはなかったですね」

　こうして「大学経由Jリーグ行き」を目指すことにした圭悟の興味をひいたのは、流通経済大学だった。当時、在学中の山村和也と比嘉祐介がU-22日本代表に選出され、注目を集めていた。

「広島にいたんで、関東の大学の知識があまりなくて。でも、流経はプロをバンバン輩出していた。雑誌でも読んで、『この大学、面白そうだな』と」

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