2年夏の県大会では4試合21イニングを投げ1失点。打者としても2本塁打を放つなど、投打で圧巻の数字を残し、夏の甲子園出場を決めたのだ。本番で“らしさ”を発揮した後輩の躍動に、岩佐も脱帽するしかなかった。

「あいつはやる時はしっかりやる。朝練は毎日始発で毎日練習に出て努力していましたし、普段からメリハリをつけて行動できるんです。それに秋と春、山田は後ろで投げて打たれていたので、夏は山田が先発して僕が後ろで投げるようになったので、それが良かったのかもしれないです」

　短いイニングを投げる方が得意という岩佐の特性もうまくはまった。さらに夏の甲子園で、初めて岩佐はエース番号を背負った。背番号8をつけた先発の山田からバトンを受け粘投を重ねた。岩佐は大会中に右ヒジを痛め、準決勝の智弁和歌山戦は登板できなかったが、ライバルでもある後輩の存在が、先輩の背中を何度も押し続けたことは間違いない。

「マウンドであれだけ闘志を見せつけるヤツはいないと思います。でも、高校時代はとにかく負けたくなかったですね。普段はおちゃらけてるヤツですけれど、マウンドに立ったら本当に頼もしかったです」

龍谷大・岩佐直哉　©︎Fumi Sawai

「山田がいなかったら3回も甲子園に行けなかった」

　今年のセンバツ、そして夏の甲子園での山田の躍動はすでに承知の通りだが、3年間、ともに歩んできたチームメイトも同じような声を揃える。

　中学時代からチームメイトで副将も務めた内野手・津田基（3年）は「野球においては、ここまで頼りがいのあるやつはいないと思います。いつも何かやってくれそうな雰囲気を持っています。山田がいなかったら3回も甲子園に行けなかったですよ」と話す。

　山田のストイックさは、今夏までずっとマウンドを分け合ってきた左腕・星野世那（3年）も同意見だった。“葛藤”していた時間も見てきただけに、その言葉には実感がこもる。

近江・星野世那（3年）　©Nanae Suzuki

「あんなに練習するヤツは見たことがないです。その姿勢に僕らは引っ張られてきたと思います。1年生の時はどちらかというとそこまで練習する方ではなかったんですけれど、徐々に練習量が増えて、その雰囲気がチームを引っ張っていっているような感じになっていって……。そういうヤツが、人の上に立って引っ張っていくんだと思いました」

　ただ……、と星野は笑みを含めてこう明かす。

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