無死一塁の打席で、送りバントと見せかけて、三遊間にあざやかに流し、俊足飛ばして内野安打にする野球カンの鋭さ。そうした時でも、淡々、飄々……そんな「おとぼけ」もにくい。

「体も小さいし、パッと見、そう見えるから技巧派とかよく言われますけど、増居はここ一番の場面ほどストレートで勝負にいって、やっつけてくる。立派な“本格派”です」

　JR東日本の監督当時に伊藤将司投手を指導した慶應義塾大・堀井哲也監督は「もしかしたら、アマチュアの頃の比較なら、増居投手の方が上かもしれない」、そんな見立てをしてくださった。

　出力配分を考えながら投げる先発のピッチングで、アベレージ140キロ前半。そんな左腕が、目の前の3人退治で投げたら、いったいどんな投げっぷりになるのだろうか……と、ふと思う。

　スピードを買われてプロに進んだサウスポーたちが、コントロールで苦労する現実がいくつもある中、当たり前のようにストライク先行で投げられて、両サイドに確かな「ライン」を作りながら、ベース上での速球の勢いも兼ね備える。

　左がいない、いない……と嘆くのなら、こういう左腕を「いきなり」はないにしても、繰り上げ1位で獲得しておけば、「獲っておいてよかったなぁ……」とホッと胸撫で下ろす場面が必ずやってくるような……そんな未来も容易にイメージできる。

　意外と、こういう投手がドラフトの「盲点」になっている。

＜捕手編に続く＞

#2に続く

ドラフト記者の本音「大阪桐蔭・松尾汐恩“捕手としては”好みが分かれる」「松尾以上の高校生捕手は彼」2022年ドラフト目玉候補《捕手ベスト3》

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。