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野村克也監督のバッグを忘れる大失態! 平謝りの裏方に名将がかけた言葉は…ヤクルト一筋44年“伝説の用具担当”が明かすスワローズ秘録 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/10/11 11:01

野村克也監督のバッグを忘れる大失態! 平謝りの裏方に名将がかけた言葉は…ヤクルト一筋44年“伝説の用具担当”が明かすスワローズ秘録<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

野村克也監督時代の1992-93年以来の連覇を果たした東京ヤクルトスワローズ

 44年間、裏方としてチームを支えてきた寺井さん。球団史上初の優勝に導いた広岡監督から始まり、携わった11人の指揮官はそれぞれ思い出深いという。

「武上(四郎)さんは気迫溢れる方でしたが、必ず甘いアイスティーを飲まれるのがルーティンでした。試合が終わるといつもマネージャーに“おい、紅茶準備できているか?”って。土橋(正幸)さんも豪快な方。用具が準備できておらず凄く怒られたこともありましが、キャンプ中によく裏方を部屋に呼んで、一杯いただきました。関根(潤三)さんはお酒を飲まれないんですが、夜部屋にお邪魔してご馳走していただりと、本当に優しい方でした。でもやはり最も印象深いのは野村(克也)さんでしょうか」

ボストンバッグを積み忘れ……大失態に野村監督は

「ID野球」を掲げヤクルトの黄金期を築いた野村監督。監督室には沢山の本が積まれ、その前に座った指揮官は勝敗表やデータを見つめながら常に考えごとをしていたという。野球論や人生観という面で選手の頭を鍛えに鍛えた名将だが、裏方に対しては常に穏やかに接した。

「9年間指揮をとっていらした中でも、用具に関しての要望や注文は一度もなかったです。キャンプ中私が練習の準備をする姿をじーっと見ていると思ったら〝おい〟と呼びよせて、“朝から夜までお前はよく動くな。体は大丈夫か?”と声をかけてくれて……よく気遣っていただきました。ただ、一度青ざめた出来事があったんですよ」

 今思い出しても冷や汗をかくという大失態は、福島・いわき市での開催試合での出来事。前日に神宮球場のクラブハウスからトラックに荷物を積み込み陸路移動するのだが、よりによって監督の一番大事な私物のボストンバッグを積み込み忘れてしまったのだ。

「夜7時ごろいわきのホテルに着いたらボストンバッグがない。素直に事情を話して“急いで取りに戻ります!”と平謝りしたんですが、監督は怒ることもなく〝夜中12時くらいまでは起きているから大丈夫。気を付けて行ってこいよ〟と。そこからトラックで神宮へ戻りまた福島へUターン。監督は本当に起きて待っていてくれたんです。全く怒られませんでしたね」

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