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プロ野球PRESSBACK NUMBER
野村克也監督のバッグを忘れる大失態! 平謝りの裏方に名将がかけた言葉は…ヤクルト一筋44年“伝説の用具担当”が明かすスワローズ秘録
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/10/11 11:01
野村克也監督時代の1992-93年以来の連覇を果たした東京ヤクルトスワローズ
他のスタッフとともにオフに野村監督の都内の自宅に挨拶に行った際には、クローゼットに案内され大量のスーツとネクタイを前に「どれでもいいから、合うやつもっていっていいぞ」と言われたこともあった。
「ネクタイは全て高級ブランド物でした。スーツはサイズが合わず遠慮したんですが、“じゃあこれならどうだ”と持ってきてくれたのが監督が若い頃にフルオーダーで仕立てたと思われる紺色のシックなスーツ。たぶん思い出のものだったろうと思います。感激して私は一時期、そればかり着ていた思い出があります。裏方には気を遣ってくださいました」
ハウエルがベンチで感情爆発! 93年日本シリーズの激闘
その野村監督のもと、92、93年と果たした連覇。寺井さんが裏方として携わった9度の優勝のなかで最も印象深いのは、93年の西武ライオンズとの日本シリーズだという。前年に同じ対戦カードで第7戦までもつれ込んだ末に惜敗。因縁の再戦で、今度は4勝3敗で西武を破り雪辱を果たした。
「とにかく選手たちの気迫がみなぎっていました。普段はとても温厚な(ジャック・)ハウエルが、チャンスに打てず戻ってきたベンチ裏で感情を爆発させる姿も見ました。最後は高津(臣吾)さんが2イニング投げて胴上げ投手に。あの時の野村監督の嬉しそうな表情は今も胸に浮かんできます」
当時の守護神が監督となり、今年はその93年以来となるリーグ連覇を果たした。寺井さんから見て、当時から流れ続けるヤクルトのチームカラーとは何だろうか。
「昔も今も変わらないのは、ロッカーでみんなが常に和やかなこと。ベテランも若手も垣根がなく喋っているのですが、決してなあなあな雰囲気というわけではなく、良いことも悪いこともお互い言い合っているように思います。よくファミリー球団と言われますが、そういう空気感がチームの強さなんだろうな、と感じています」
≪後編≫へつづく
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