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川崎F一筋の現代表・谷口彰悟31歳はいかに“世界”と向き合っているのか?「Jリーグで戦いながらルカクをイメージするんです」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKAWASAKI FRONTALE
posted2022/09/22 17:11
プロデビュー以来、一貫して川崎フロンターレでプレーする谷口彰悟。Jリーグで戦いながらも、常に“世界”を念頭に置いていると語る
W杯落選直後の中村憲剛に授かった「金言」
11月には、いよいよW杯カタール大会を迎える。
谷口彰悟にとって、物心ついた最初のW杯の記憶は2002年の日韓大会になる。地元開催ということもあり、ほとんどの試合をテレビで観戦し、幼いながらもその規模と熱量に驚いた。そしてスーパースターたちが国を背負って戦う姿に魅了された。
プロになってからは2014年と2018年の2大会を目にしている。
川崎フロンターレの同僚では、2014年に大久保嘉人、2018年には大島僚太が本大会のメンバーに選出されているが、それ以上に谷口の中で忘れられない記憶がある。
2014年ブラジル大会のメンバーに落選したときの中村憲剛の姿だ。
この時のメンバー発表は、バスでチームメートとともに見守っていた。ACLのFCソウル戦を前に、羽田空港に向かう車内だったのだ。サプライズで大久保嘉人が招集された一方で、川崎のバンディエラである中村憲剛の名前は読み上げられなかった。ぼう然とし、落胆している33歳のベテランの様子を、当時大卒ルーキーだった谷口は目の当たりにした。
「嘉人さんの名前が呼ばれて盛り上がったんですけど、『憲剛さんが入らなかったのか』という空気にもなった。その時、すごく気落ちしている憲剛さんがいて……。W杯にかける気持ちがあって、あそこで呼ばれなかったショックは、今になってわかります。あれは簡単には立ち直れないです」
この話には続きがある。
その韓国からの帰りの飛行機で、谷口は中村と席が隣になったのだ。そして落選した傷がまだ癒えていないであろう中村から、「代表を目指すべきだ」と説かれたのだという。
「どういうきっかけでその話になったのかは覚えていないんですが、あの帰りの飛行機で、憲剛さんが代表についての考えや思いを自分に話してくれたんです。『代表を目指すのはすごくいいこと。世界が変わっていくし、そこを目指すことは、サッカー選手にとっては大事なことだから』と話してもらったのをよく覚えています。あれは自分にとって貴重な時間でした」
このときの谷口はプロ1年目。それも試合に出始めた直後の時期だったので、まだA代表に現実味は感じていなかった。だからこそ、あの言葉の意味と重みを、経験を積んだ今になって噛み締めている。