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東尾理子(46歳)が“東尾修の娘”を自覚した日「陰口、無視…やっかみはありましたね」「プロになりたい、なんて簡単に言えなかった」
text by
郡司倫Rin Gunji
photograph byHirofumi Kamaya
posted2022/09/19 11:02
ゴルフとの出会いや2世としての葛藤を明かした東尾理子。プロテスト合格当時には「東尾修の娘」としてメディアから大きな注目を浴びた
人の考え方やカウンセリングに興味をもった東尾は、留学先のフロリダ大学で心理学を専攻した。辞書を片手にひたすら本を読み、論文を執筆する日々は苦労も多かったという。
「文献を読むのがとにかく大変で。最初は英和辞典を引いていたんですが、専門用語ばかりなので和訳の意味がわからず、今度は国語辞典を引く……みたいな。それが面倒くさくなってきて英英辞典で引くようになり、心理学の内容はインプットもアウトプットも英語でするのが自然になりました。
アメリカに来て嬉しかったのは、“東尾修の娘”から解放されて、周囲の雑音がなくなったこと。中学生のころからの念願でしたから。といっても、父のことはリスペクトしてますし、今も関係はずっと良好ですよ」
学業の傍らでゴルファーとしての活動も充実。全米大学体育協会が全米のスポーツ優秀者に贈るオールアメリカン、同協会が学業優秀者に贈るアカデミック・オールアメリカン、全米女子プロゴルフ協会がゴルフと学業が優秀で社会福祉に貢献した学生に贈るダイナショア・アワードを受賞するなど、まさに文武両道を実践した。
「勉強が忙しすぎて、ゴルフが息抜きみたいな感じになっていたのが良かったかもしれません。当初は大学院に進学したいと考えていたのですが、大学4年になって、プロになりたいという気持ちがだんだんと強くなってきました。どこまでゴルフが上手くなれるか試したい。そのためにプロになることを決意したんです」
ニュース速報「東尾修の娘がプロテスト合格」
99年からUSLPGAツアーの下部にあたるフューチャーズツアーに参戦すると、同年のSNETクラシックで早くも初優勝。8月にはJLPGAプロテストを受験し、一発合格を果たした。
かつてのプロ野球界のスターの娘が、アメリカの大学ゴルフ界で数多くのタイトルを獲得して凱旋帰国。満を持してプロゴルファーのキャリアをスタートさせた23歳に、日本中の注目が集まった。
「フューチャーズツアーでは勝てましたけど、上とはレベルが違うので、正直自信を得られたという感じではなかったです。JLPGAのプロテストは話題になりましたね~。『東尾修の娘がプロテスト合格』って、ニュース速報が出たのを見ました(笑)。でも、もうそのときは以前とは違う気持ちでしたよ。日本に帰ってきたら注目されるのはわかっていたことだし、親の七光りと言われないように頑張ろう、ツアーへの出場権は自分の力で勝ち取ってやろう、と」
報道が過熱する一方で、その中心にいた東尾は意外なほど冷静だった。
厳しい覚悟を持ってプロ野球の世界を生き抜いた父・修のように、プロゴルファーとして結果を出すことだけを考えていた。
(つづく)
Hair&Make / Mitsugu Takahashi
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。