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「絶対に恨んだりしない」涙する娘が父と交わした“誓約書”…ゴルフ笹生優花の原点「この書面にサインしたら、練習時間は親子じゃないよ」
posted2024/08/08 17:02
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph by
Getty Images/Shigeki Yamamoto
松山英樹の銅メダルに沸いたゴルフ界、続いて注目は女子ゴルフに向けられる。キープレイヤーは自身2度目のオリンピックとなる笹生優花だ。東京大会はフィリピン代表として出場したが、大会後に日本国籍を取得し、今大会は日の丸を背負う。23歳にして2度も全米女子オープンを制した逸材は、ゴルフ界初の金メダルをもたらすことができるだろうか。父・正和さんを取材した。【NumberWebインタビュー全3回の2回目】
笹生優花の全米女子オープン2度目の優勝は、22歳11カ月13日で史上最年少記録となった。優勝前の世界ランキングは30位だったが、一気に6位まで上昇し、日本勢トップに。逆転でパリ五輪出場を決めた。
ただ、今シーズンはなかなか調子が上がらず、優勝は遠く感じられていた。それでも父・正和さんは米ツアーに同行し、娘を支え続けた。
「まさか、(ツアー2勝目を)また全米女子オープンで勝つとは思っていなかった」
ホッとした表情を見せながら、幼少期の出来事を振り返った。
日本に馴染めない娘がのめり込んだゴルフ
笹生は父・正和さんとフィリピン人の母・フリッツィさんとの間に長女として生まれた。妹と3人の弟がいる7人家族だ。長女の優花は4歳までフィリピンで育ったが、その後、教育環境を考えて家族で日本へ渡った。
「日本語が分からないから幼稚園にいっても友達ができなくて、私が迎えに行くまでずっと玄関で待っているんです。まだみんな遊んでいるのに、もう帰る支度をしていました。テレビも何言っているか分からないし、家でも私や女房の周りにいる感じでした。それでゴルフの練習に連れていったんです。そしたら楽しかったのか、のめりこんでね。いま思うと友達ができない寂しさをゴルフで紛らわせていたのかもしれません」
当時、米女子ツアー通算10勝のポーラー・クリーマーが優勝するシーンなど、海外の試合を見ていた笹生は「プロゴルファーになりたい。私もこういう風になりたい」と父に言った。