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「小学5年生が大学生との試合に出場」「17歳でプロで通用する選手に」風間八宏の“セレッソ育成改革”が今回もトガっている
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph bySatoko Moritsugu
posted2022/09/01 17:00
セレッソ大阪のアカデミー技術委員長を務める風間八宏氏。やはりその指導スタイルは独特だった
8月8日には高校生・中学生中心のセレッソ大阪スペトレ選抜チームが「セキショウ・チャレンジマッチ」に出場し、筑波大学に3対0で勝利した。筑波大学はベストメンバーではなかったとは言え、内容面でもスペトレ選抜が圧倒し、後半には小学5年生がピッチに立って会場を沸かせた。
「超高速ポゼッションサッカー」への挑戦
なぜ体格で劣る年下のチームが、大学の強豪に勝てるのか? その秘密は新たな風間流にある。
新たな風間流を一言で表せば、川崎フロンターレ時代のスタイルをさらに正確にして加速させた「超高速ポゼッションサッカー」だ。
横パスとバックパスをムダなものとし、躊躇なく縦パスを差し込んで行く。受け手は一発でターンを試み、次のパスも縦方向を狙う。まるで縦パスのリレーで、敵ゴールに一直線で向かおうとする。
もちろんターンの必要すらないように、前を向いた状態で受けようとする選手も複数いる。「全員がボールを受けられるところに顔を出す」が合言葉で、必然的に選手がピッチの中央にぎゅっと集まる。ワイドレーンはほぼ使わない。
大切なのはいかに狭い中で駆け引きやステップでフリーになり続けるかで、もはや体格差は問題ではなくなる。俊敏性という点で、むしろ小さい方が有利だとも言える。だから大学生との試合に小学生が出られるのだ。
すでに今季の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグの開幕戦から、現在のスタイルの輪郭が見えていた。
たとえば前半4分のゴールキックでは、縦パスを4本連続でつないでど真ん中を切り裂いた。
まずMF伊藤翼が降りてGKからパスを受けると反転。伊藤はどこにでも蹴られる位置にボールを一発で置いたので、相手2トップは近くにいるのに飛び込めない。ボールを正確に「止める」と、相手の動きも止められるのだ。
伊藤は余裕を持って周りを見渡すと、MFエレハク有夢路へ縦パス。エレハクが反転して数メートル前のMF山田光太郎に縦パスを入れると、山田も反転して数メートル前にいるMF末谷誓梧に縦パス。
さらに末谷からFW木下に縦パスが入り、裏へ飛び出た右サイドバックの中山聡人が上げたクロスはGKにキャッチされたが、この25秒間にバックパスは1本もなかった。とにかく縦、縦、縦。全員が正確性×速さを身につけていなければ、実現できないだろう。
ナーゲルスマンのバイエルンと共通点がある
このサッカーは、ナーゲルスマン率いるバイエルンと多くの共通点がある。