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「小学5年生が大学生との試合に出場」「17歳でプロで通用する選手に」風間八宏の“セレッソ育成改革”が今回もトガっている
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph bySatoko Moritsugu
posted2022/09/01 17:00
セレッソ大阪のアカデミー技術委員長を務める風間八宏氏。やはりその指導スタイルは独特だった
ナーゲルスマンは「最小限の幅」という原則をつくり、サイドの選手たちに広がりすぎないように伝え、中央突破を意識させている。【場所】について言及することで、速い攻撃を実現しているのだ。
一方、風間は「最短・最速」という【時間】についての原則をつくり、全員がゴールへの最短距離を意識することで、結果的に陣形が「最小限の幅」になっている。
【場所】と【時間】、どちらを強調するかに違いがあるだけで、そこから生まれるサッカーがほぼ同じというのは興味深い。
「最近はシステム論ばかり話題になりますが、もっと時間に注目すべきでしょう」と風間は指摘する。
「噛み砕いて言うと、17歳でプロで通用する選手にする」
それにしてもこういう極端なスタイルや育成方針を採用して、風間は何を目指しているのだろう?
そう質問すると、風間は一言で言い切った。
「17歳で完結させることです」
あっけにとられた顔をしていると、風間はこう続けた。
「噛み砕いて言うと、17歳でプロで通用する選手にするということ。
そもそもアカデミーはプロになるための育成組織ですから、大学進学を目指して来る場所ではありません。もちろん適性があるので、もっと時間をかけてからプロになった方が良い選手もいるし、結果的に大学へ行く選手もいるかもしれませんが、『17歳でプロになる』という一つの指標を組織全体で共有しています。
そう考えると、育成を始めるのはもしかしたら5歳でもぎりぎりかもしれません。なのでセレッソでは、スクールとアカデミーを分けて考えていません。
スクールのコーチたちには『トップチームの問題は、スクールの問題だと考えるようにしよう』と伝えている。もしトップでチャンスを作っているのに点を取れていないのなら、スクールの問題だと。今セレッソではトップからスクールまで、全員がつながっています」
小5の子は高校生の中に入るとさらに目立つんですよ
セレッソのジュニアに、風間が「おもしろい」と感じる小5がいるという。
「いい選手というのは探さなくても目に入ってくる。それには2タイプいて、常にゴールに絡める選手と、ゲームをコントロールできる選手です。どちらも相手とサッカーをできるのが共通点です。
その小5の子は小学生の中でも目立つんですが、スペトレで高校生の中に入るとさらに目立つんですよ。『この子はここまで見えていたのか』と気づかされました。
子供は変わるので、この先どうなるかはまったくわかりません。でも逆に言えば、期待をさらに超える可能性もある。
1人でスタンドを満員にできる選手を、私はただ見たいだけなんですよ」
もし風間がJクラブの監督の座に留まっていたら、指導できる選手は1年間に30人程度にすぎなかった。
しかし、セレッソでは指導者の育成を始め、それによって多くの仲間ができ、数百人規模の子供を見ることが可能になっている。
世界的にも才能は偶然の産物として捉えられており、メッシ級が生まれるかはわからない。だが、大阪から日本サッカーの新たなうねりが起ころうとしていることは間違いない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。