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「小学5年生が大学生との試合に出場」「17歳でプロで通用する選手に」風間八宏の“セレッソ育成改革”が今回もトガっている
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph bySatoko Moritsugu
posted2022/09/01 17:00
セレッソ大阪のアカデミー技術委員長を務める風間八宏氏。やはりその指導スタイルは独特だった
拙著『ナーゲルスマン流 52の原則』(ソル・メディア)の取材で、開幕戦のシーンについて話題を振ると、風間はこう解説した。
「開幕戦だったので、このときは今と比べて全然の出来ですよ。それでも相手ゴールまで一直線でしたよね。相手がついて来られない速さで、縦パスが入っていた。
ど真ん中でこちらがボールを持っているのに、相手が飛び込めないのは、ボール保持者の『止める』が正確なのと、もう1つはパスコースがたくさんあるからですよ。全員がボールを受けられるところに顔を出すので、ボール保持者に余裕ができる。
なおかつこちらのFWが相手センターバックの体勢を崩しにかかるので、DFラインは構えていられない。相手は戻りながら守備をすることになり、敵が届かない場所がたくさんできるんです」
この説明だけだと、フロンターレ時代とそれほど大きな違いがないように感じるかもしれない。もちろんセレッソで実践しているサッカーは、その延長線上にある。「止める、蹴る、運ぶ、受ける、外す、見る・見ない」の6項目が、すべての基本であることに変わりはない。
フロンターレ時代から「最短・最速」が加わった
だが、フロンターレ時代に言語化されていなかった新たなキーワードを加えると、異なるスタイルに昇華されていることがわかるだろう。
そのキーワードとは「最短・最速」だ。
「選手たちには最短でゴールを目指そうと伝えている。ゴールへ行くまでの時間を短くしようということです。
たとえば、サイドを攻撃するというのは、ゴールに対しては遠回りなんですよね。ボールがゴールから横方向に離れる分、時間がかかるわけですから。それは『何も起こらない時間』であり、ムダな時間なんです。
最短・最速で行こうとしたら、使うフィールドは必然的に小さくなる。そこで相手が経験したことがない速さと正確性でプレーできたら、もはや相手はついてこられない。
たとえ相手がボールを奪ったとしても、フォーメーションは崩れてしまっているので、相手はこのフィールドから簡単には抜けられません」
プレータイムのイメージを「1秒」と定めた根拠
風間はプレータイムのイメージを1秒と定めている。
「ボールが動いている時間を0.5秒として、その間にフリーになって止めて蹴るまで0.5秒。合計1秒の間に結果を出そうと選手たちに伝えている。
時間を決めると、選手がつながるためのフィールドの大きさが決まる。そこで初めて本当のシステムが決まるんです。
この速さでプレーできれば、どんなチームへ行っても、困らずにプレーできるでしょう」