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「いったいコヌマは何年間、高校の指導者をやってきたんだ!」オシムは選手権を見てなぜ激怒した? 帝京の名将・古沼貞雄に伝えていた高校サッカーの問題点
posted2022/09/03 17:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Takao Yamada
思い立ったらすぐ行動――。それは古沼貞雄さんのポリシーの一つである。2003年限りで9度の全国優勝に導いた帝京高校の監督を退いて、少しした時期だった。当時、66歳を迎えたばかりの古沼さんは、ジェフユナイテッド市原・千葉の練習場に足しげく通うようになっていた。高校サッカー界きっての名将は、イビチャ・オシム監督の『走るサッカー』、『走る練習』に興味を抱いたという。知人だった当時の祖母井秀隆ゼネラルマネジャー(GM)に「練習を見てみたい」と相談すると、快く迎えてくれた。
オシムのトレーニング法は横綱・白鵬と同じ?
「トレーニングの前にオシムとも顔を合わせました。どのように紹介されたのかは分からないですが、会ったその日からよくしてくれて。65歳を過ぎた白髪頭のジイさんがわざわざ来るんだ、コイツは普通じゃないな、と思ったのかもしれませんね」
遠慮してタッチライン際で眺めていると、オシムがつかつかと歩み寄ってきた。「そんな遠くにいないで、近くまで来い」と。古沼さんは初日からスニーカーでピッチの中まで入り、間近でトレーニングを見学した。感心させられたのは、入念なウォーミングアップ。
「横綱の白鵬は土俵に上がる前に1時間くらいは準備運動を兼ねた基礎トレーニングをしていたと言いますが、それと同じでしたよ」
週2回は千葉の姉崎まで通い、飽きもせずに選手たちがボールを追いかける姿を眺めた。気がつけば、帰り際にクラブハウスの食堂で選手、スタッフと一緒に昼食を食べていくように促されるまでになった。指導者として学ぶ姿勢を持っていたこともあるが、何よりオシムの練習を見ているのが楽しかったのだ。