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大谷翔平のWBC出場には”ウルトラC”が必要?「出たい気持ちはもちろんあります」 栗山監督が熱視線も…ダルビッシュが示す難しさとは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2022/08/22 11:00
エンゼルスの大谷翔平は来年開催のWBCに出場するのか? チームの去就も鍵を握るだろう
ダルビッシュが示す”難しさ”と”複雑さ”
今回の視察で栗山監督と直接、面談したダルビッシュの発言が、シーズン前に行われるWBCにメジャーリーガーが参加することの難しさ、複雑さを端的に表すものだった。
面談を終えたダルビッシュは「栗山監督と一緒にやりたい気持ちもある。若い有名な選手と一緒にプレーできる機会はなかなかない。すごく魅力的だと思う」と発言。この発言から一部で出場が決まったかのような報道が流れたが、即座にダルビッシュ本人がツイッターでその報道を牽制した。
「話した内容の一部を切って見出しにするの本当にやめてほしいです。まだお話をいただいただけで、何も決まっていません」
直後のラジオ配信アプリでは3月に大会が行われることから家族と過ごす時間の問題や開幕前に追い込んでマウンドに上がらなければならない肉体的な課題、また順調なら23年オフに取得するFA権をめぐる契約の問題等も含めて、WBCへの出場には障害が多いことを強調している。
大谷の参加ムード盛り上がりに”警鐘”
その上で大谷にも言及した。
「来年オフにFAとなる大谷くんもまさにそう。(WBCへの出場は)ただでさえ負担がかかり、ダメージは蓄積される。日本国民全員で出るようにプレッシャーをかけてしまうと、大谷くんも応えようと思うでしょうし、大谷くんの活躍で沸く日常がなくなる可能性を高めてしまう。盛り上げたいメディアや、ファンの気持ちも分かるけど、そこの現実もわかってあげて欲しい」
大谷の参加ムードが盛り上がることで生まれる危険性に、こう警鐘を鳴らした。
ヤンキース・松井秀喜が参加辞退した理由
WBCへの不参加で、ある意味、最も叩かれたのは06年の第1回大会のニューヨーク・ヤンキース、松井秀喜外野手のケースだった。
出場問題が表面化した05年当時の松井さんは、ヤンキース移籍3年目のシーズンを終えたところで、そこに日本代表・王貞治監督の参加要請を受けた。ヤンキース移籍から主軸として活躍し、その実績を評価されて05年のオフには、新たな4年の大型契約も結んでいた。
第1回のWBCはその大型契約がスタートする1年目のシーズン前に行われる大会だったのである。
メジャーでもとりわけ競争が激しいヤンキースというのも松井さんには1つの足枷だった。3年間実績を積んでチーム内に土台を築き、その実績をチームも評価。そうして新しい契約を結び、いよいよ本格的にメジャーリーガーとしての地歩を固めるステップに入る。松井さんにとってはそれが06年シーズンの位置付けだったのである。
だからこそどうしても結果を出さなければならなかった。その重圧を背負ったシーズンを前に、キャンプからオープン戦の期間にチームを離れるリスクはあまりに大きかった。
それが参加辞退の最大の理由だった。