マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球スカウト「ドラフト1位重複も十分ある」現地で聞いた浅野翔吾(高松商)の評価「牧(DeNA)タイプだけど、足は浅野のほうが速い」
posted2022/08/14 17:03
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
高松商・浅野翔吾中堅手(3年・170cm86kg・右投両打)の2打席連続本塁打。
甲子園初戦の佐久長聖戦。その兆候は、その前の2度の打席から、すでに見えていた。
最初の打席。カウント2ー2からの外角いっぱいの速球と、その直後のショートバウンドのスライダーに、まったく頭が動かない。
目からいちばん遠いコースに投じられた誘い球に体を引っ張られず、目の位置を変えずに、しっかり見極めて、四球にした。
第2打席、高々と打ち上げた三塁フライの「高さ」が、高校生じゃない。
ちょっと秋めいてきた感じの澄んだ青空に、一瞬溶け込んでから落下してきたその飛球の滞空時間が6秒96。
6秒超えたらプロ級といわれる滞空時間。二松学舎大付高時代の鈴木誠也(カブス)の内野フライもセカンド、ショートが2人とも見失うほどの高さだったが、それでも6秒前半がせいぜいだった。
浅野の「選球眼」に驚いた
だから3打席目、浅野のライナー性の打球が、右中間最深部に吸い込まれるように見えなくなった時も、「ホームラン」という結果には、それほど驚かなかった。驚いたのは、その内容のほうだ。
第1打席と同様に、追い込まれてからの外いっぱいとスライダーのショートバウンドを、微動だにせず見極めたあとのフルカウント、6球目。真ん中外寄りのボールを、ホームベースの上、比較的近いポイントで捉えたように見えた。
浅野のセンターから右中間方向への打球は、すごく伸びる。体に近い場所に「パワーポイント」を作り、そこからグイッと押し込んでいく力感がすばらしい。
驚いたのは、「選球眼」だ。ストライクとボールを見極めるのも選球眼だが、打つべきボールを見つけ出すのも選球眼。その両方がすばらしい。
この打席、浅野に投じられた「6球」のうち、打ってヒットになるボールは6球目のただ1球。彼はその「ただの1球」を甲子園のホームからいちばん遠い右中間最深部に放り込んでみせた。
岡本和真(巨人)の高校時代を思い出した
そして、圧巻は第4打席だった。
やはり、カウント2ー2から真ん中内角よりのスライダー系を、レフトスタンドぎりぎりにライナーで持っていった。