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2月に脳梗塞で戦線離脱、DeNA齋藤隆チーフ投手コーチが振り返る前半戦「復帰する時に妥協することなく彼らとともに歩いて行こうと決意した」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2022/08/01 11:02
身振り手振りを交えながら選手に言葉を尽くす姿が印象的な齋藤コーチ(右)
また新加入のガゼルマン、楽天からトレードで移籍してきた森原康平に関しても「経験値もありますし、チームのどこにハマってくれるか楽しみです」と期待を寄せている。
そして今季、3年ぶりにクローザーとして君臨している山﨑康晃。ベイスターズ時代に加え、ロサンゼルス・ドジャース時代にもクローザーを務めた齋藤コーチは、山﨑の存在がブルペンの安定をもたらしていると語る。
俺が伝えられるのは熱量しかない
「経験上、ブルペンというのはクローザー次第だとわたしは思っていて、そういう意味で山﨑が期待通りの働きをしてくれることは一番ありがたいことなんです。またセーブシチュエーションじゃなくても、なにひとつ変わることなくしっかりピッチングしてくれる。そこは本当に信頼しています」
齋藤コーチは技術的、戦略的な指導はもちろん、冒頭の言葉からも察せられるように、投手の気持ちに寄り添うコーチだ。試合前の練習時、スタンドから見学している取材陣からはなにを言っているのかわからないが、大きなアクションで選手たちに熱心に話しかけている齋藤コーチをよく見かける。その姿にはパッションを感じるのだが、そう伝えると、齋藤コーチは「ああ、あれですか」と少し恥ずかしそうな表情を浮かべ言った。
「選手たちが、現役時代のわたしのことをどう思っているのかわからないのですが、ただ皆に言っているのは『俺は完璧なピッチャーじゃなかったのは間違いないし、むしろお前たちの方が優れている。だから、とにかく俺が伝えられるのは熱量しかない』と。時にはユーモアを交えリラックスさせたり、また勝ちがつづいてフワッとした空気のときはギュッと締めてみたり、明確な答えはないのですが、バランスを取りながら、選手たちの気持ちが切れないように心掛けています」
脳梗塞から復帰し強く決意したこと
齋藤コーチといえば現役引退後の2020年にヤクルトの投手コーチを1年務め、昨季日本一になった投手陣の礎を作るのに尽力したが、当時の経験は生きているのだろうか。