門別投手のすぐ背後から見える球道は、右打者の内角にすべるようにきまるクロスファイアーが抜群にいい。1メートル近い長さのあるバットでは、高校生にはわかっていてもさばききれない絶対的な武器だ。門別本人が語る。

「去年の木村（大成、北海高→ソフトバンク3位指名）さんのスライダーは凄かった。頭に当たるか！と思ったボールが、アウトコースでストライクになってましたから。自分の場合は、クロスファイアーでそういう手の出ないボールを投げられるように練習してるんで」

　一方で、逆の球道で右打者の外に投げたボールが、スッと沈んだように見えた。ツーシーム？と訊いたときの、門別投手の返事にへぇーっと思った。

「ちょっと力を抜いただけのストレートなんです、ただの。まっすぐも何通りかの力の入れ具合で、スピードや強さにバリエーションをつけて……勝手に動いてくれたり、バッターのタイミングも外せるんで」

　門別投手には、2人の「女房役」がいる。

　1人は、この春の公式戦以来、ずっとバッテリーを組んでいる菊地晋捕手。彼とのコンビは、日高・富川中学から。小学生当時からの幼なじみだ。

「一緒に遊んで、よくケンカもしたし、顔を見てれば、だいたいわかります、啓人の気持ちは」

　菊地は小柄な体で150キロ近い速球を受けとめ、スライダーの強烈なショートバウンドを前に落とす。この春の北海道大会では、5番打者としてもしぶとい打撃を発揮した。

【2】東海大札幌高・唐川侑大捕手（3年）「本来は北海道イチ」

　そして、もう1人。小学生当時に、ファイターズジュニアでバッテリーを組んでいた唐川侑大捕手（3年・176cm81kg・右投右打）。体調不良で春の公式戦を回避。最後の夏一本に賭ける。

　本来なら、道内ナンバー1のスラッガーと評してもよいほどの高校生ばなれした強打の持ち主だ。最初の打席の最初のボールを、ひと振りで円山のバックスクリーンに放り込んだ場面も見ている。

　復調途上、今日のメニューは室内練習場でのティーバッティング。

　木製バットを使っている。ふところの深い構えといい、引き腕（左腕）と押し腕（右腕）の力感のバランス抜群のスイングといい、室内に響き渡るインパクトの轟音といい、早く実戦のグラウンドで腕前を見せてくれよ……思わず、そう叫んでしまったほどの圧倒的な迫力。もうすっかり、大人のスイングスピードと猛烈な打球の勢いだ。

「自分にはもう夏しか残ってないので、全力でやるのは当然なんですけど、全力で頑張ったけどダメだった、では許されない。期待されているだけのプレーはやらないといけないんで……」

　ちょっと思い詰めた感じがないでもないが、合わせにいったこちらの目を、しっかり受けとめていたまな差しの強さに期待しよう。

　マウンドに上がっても、コンスタントに140キロ前後をマークできる強肩、足も50m6秒前半。外野手としてもチームに貢献できる守備力を兼備している。

「自分は旭川だったんですけど、日高の門別とバッテリーを組んで、（ファイターズ）ジュニアでもいい思い出がありますから、やっぱり最後はバッテリー組みたいって気持ちあります。高校でも、最初は自分が受けてましたから」

　この夏、そしてその先にプロも見据え、「空白の春」の分まで「唐川侑大、大奮闘の夏」にしなければならない。 

【3】京都外大西高・西村瑠伊斗外野手（3年）「12球団スカウトがホメる」

　知恩院、南禅寺から哲学の道をたどって、法然院に銀閣寺。

　京都を訪れる観光客の多くが、まず向かうのが「東山」。

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