京都の市街地をはさんで、ちょうどその反対側にも小高い山々が連なる。土地の人々は「西山」と呼ぶ。

　そのてっぺんに、京都外大西高のグラウンド。

　選手たちも、グラウンドに向かうことを「西山に登る」と言い、上羽功晃監督は西山への山道を、ゴミを拾いながら歩いて登るのをルーティンにしている。

　夏の暑さもひとしおのその日、グラウンドが真っ白に見えるほどに、もうカンカン照りだ。

　京都外大西高・西村瑠伊斗外野手（3年・180cm77kg・右投左打）の打撃練習を、バッティング投手の横で、L字ネットに隠れながら見せてもらった。

　ストライクゾーンに入ってくるボールは、まず間違いなくジャストミート。七分程度の力感なのに、外野の頭上をあっさり越えていく。そこらへんが「天才性」だ。

　昨年の夏から投手としても、快足・強打の外野手としても高い評判を聞いていた。そこから1年、高校通算52本塁打（7月12日現在）。12球団のスカウトたちがこぞって誉める。

　フワッと構えて、ミートポイントがちょっとズレると、サッとそこに体の軸を持ってきて、何事もなかったように、スッパーン！と弾き飛ばす。力みも気負いも、振り過ぎもない爽快なフルスイング。スイングのイメージ以上に飛んでいくのは、丸佳浩（現・巨人）の千葉経大付高の頃が、ちょうどこんな感じだった。

「そうなんです。変化球で崩されても、とっさに体をちょっとズラしてね……天性のタイミングとバットコントロールを持ってます。長いこと監督やらせてもらってますけど、あんまり見たことないバッターですね」

　辛口の上羽監督が、但し書きなしで認めている。

　山の上は京都の街より5度ぐらい低いと選手に教わったが、その分、太陽に近いせいか、体感温度40度ぐらいはありそうな炎熱のグラウンド。バッティング、ランニングメニューに投球練習。次々にやってのけて、動きっぱなしでも、西村瑠伊斗の動きの勢いが変わらない。

「試合になったら、投げて、打ってですから、これぐらいやっておかんと」

　複数の取材が重なったこの日。練習中の硬い表情に、怒ってるのか……と思って、練習の邪魔してごめんねと謝ったら西村は、

「あ、ぜんぜん、ぜんぜん、大丈夫ですよ。自分。いつもこんな顔なんで」

　笑ってくれた顔が、やっぱり「高校球児」だったのでホッとする。

「冬の晴れた夜は、星空めっちゃきれいですよ」

　帰路、ふもとの駅まで送ってくれた丸山貴也コーチが教えてくれて、私は私で、大野雄大投手（京都外大西→佛教大→中日）なども、高校時代は、眼下に広がる京都の夜景を眺めながら、この西山を下りて行ったのかなぁ……と、そんなことを考えていた。

【4】常葉大菊川高・安西叶翔投手（3年）「1位でしょう…」

　京都も暑かったが、静岡はもっと暑かった。

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