“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
白血病を乗り越えて最愛の人と結婚式…J新潟DF早川史哉(28)の妻・真優さんが語る壮絶な道のりと今「どんなことがあっても彼を支える」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byFumiya&Mayu Hayakawa
posted2022/06/27 06:00
J2アルビレックス新潟DF早川史哉と妻・真優の結婚式の様子。たくさんの仲間たちから祝福を受けた
ピッチに戻りたいという早川の努力、そして真優さんや家族の懸命な看病が実り、入院から1年2カ月で、完全退院が許されるまでに病状は回復していく。
予断を許さない退院後の生活では、真優さんが常に寄り添った。息抜きに一緒にショッピングモールに行き、早川の実家近くの海にもよく足を運んだ。髪の毛が抜け落ちた頭を隠すためのタオルを巻き、明らかに痩せ細ってしまった体で必死に前に進もうとする彼と同じ歩幅でゆっくりと歩いた。翌18年にはジュニアユース、ユースチームのトレーニングに参加できるまでに回復し、早川は復帰に向けて段階的に強度を上げていく。
真優さんは「(練習で)今日もユースの選手たちにもついていけなかった……」と早川がこぼす愚痴にもしっかり耳を傾けた。同時に栄養面でのアドバイスを積極的に行い、復帰をサポート。時折、「そんなに無理してまでやらなくてもいいんじゃないか」と体調を慮ることもあったが、「史哉が復帰を信じてやっている以上、私にできることを最大限にやることが大事なんだ」と自分に言い聞かせ続けたという。
待望のカムバック、スタンドで祈る真優さん
そして2019年10月5日。ホーム・デンカビッグスワンスタジアムで行われたJ2第35節の鹿児島ユナイテッドFC戦で、早川はスターティングメンバーに名を連ね、実に1287日ぶりの公式戦出場を果たした。復帰後、6試合連続でベンチ入りしていたこともあり、待望のカムバックだった。
その復帰の瞬間を絶対に見逃さないよう、ホーム・アウェイ問わずに毎試合応援に駆けつけていた真優さんは、メインスタンドで早川家と並んで真剣な表情でピッチを見つめていた。早川がピッチで相手選手と交錯する度に両手を合わせて無事を祈っていた。
試合はチームメイトの奮闘もあり、6-0の完封勝利。早川もフル出場を飾った。
この復帰戦から7カ月後、2人は晴れて正式に夫婦になった。そして、その1年7カ月後に結婚式という大きな門出を迎えることができたのだった。
出席した誰もがこの2人が歩んできた道のりを知っている。だからこそ、それぞれが特別な思いで見つめ、心からの祝福を惜しまなかったのだろう。ビデオレターでは南野らU-17W杯を共に戦った仲間からもメッセージが届いた。2人の強さと温かさを凝縮した素晴らしい時間だった。