たった1点のリードでも「後続は抑えられる」……そんな自信と余裕が見える。目の前の打者だけじゃない。その向こうに、3人か4人の「後続」を感じつつ、ストーリーを描きながら投げられるから、試合を作れるのだ。

　試合後の囲み取材。次々に投げかけられる質問に、ほぼ即答で、スッと胸に落ちる答えを返す。聞けば、学業成績もとても優秀という。マウンド上で感じていた「大物感」がさらに大きく、実感を伴って迫ってきた。

「あれだけのサイズがあって、パフォーマンスにぎこちなさがないのは、よほど運動神経とボディバランスが優秀な証拠。見ていて、ああ、このピッチャーなら150キロ投げるよな……って、納得できます。イメージと事実が一致する投手って、なかなかいませんよ。レベルはちょっと違いますけど、去年の小園（健太、市立和歌山高→横浜DeNA1位指名）がそうでした。私自身は、去年の達（孝太、天理高→日本ハム1位指名）とどう違うのかなぁ……と思いながら、見てました」

　プロ野球スカウトの話の、最後のところで、ドキッと胸が鳴った。

【北海道ドラフト候補2】坂本拓己投手（知内高3年）

　球場に入って、大きな組み合わせ表を見た初老の観客が、「ええーっ！」と叫んだまま、固まっている。駒大苫小牧高が初戦で敗れている。

　負かした相手は、知内高。函館に近い海辺の町の高校が、「全国制覇」の駒大苫小牧高を破ったのだから、理由（わけ）を知らないファンにとっては、驚きしかないのだろう。

　知内高には、全道屈指の快速左腕がいる。【2】坂本拓己投手（知内高・3年・180cm85kg・左投左打）が、全国レベルの「看板」にももの怖じしない活気あふれる投げっぷりで、真っ向から立ち向かった。

思い出す「菊池雄星の花巻東高時代」

　昨年の秋、147キロを投げ、北海道大会の初戦で12三振を奪った。

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