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“V候補のセンバツ辞退”から3カ月…京都国際エース森下瑠大にのしかかった“試練”とは? 近江と初対決「山田君はやっぱりいいピッチャー」

posted2022/06/11 11:00

 
“V候補のセンバツ辞退”から3カ月…京都国際エース森下瑠大にのしかかった“試練”とは? 近江と初対決「山田君はやっぱりいいピッチャー」<Number Web> photograph by Fumi Sawai

練習試合で対戦が実現した近江・山田陽翔(右)と京都国際・森下瑠大

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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 6月8日夕方、練習試合とは思えないほど多くの観客がマイネットスタジアム皇子山(滋賀県)に詰めかけた。

 新型コロナウイルス感染者が出たことで今春のセンバツ出場を辞退した京都国際と、それに伴い代替出場し、決勝戦まで駒を進めた近江の一戦が実現した。

 センバツ大会が終わった直後の4月中旬、出場辞退の際に電話で直接連絡をもらった近江の多賀章仁監督が、「何とか試合ができないか」と京都国際の小牧憲継監督へ対戦のお願いをしたことが始まりだった。

 隣県同士の両校ではあるが、対外試合をすることは初めてだったという。

 両校は昨夏の甲子園で共にベスト4まで進出した。しかも京都国際の森下瑠大、近江の山田陽翔と主戦級でマウンドに立っていたのが共に2年生と、共通点の多い2校でもある。昨夏頃から山田と森下はSNSを通じて連絡を取るようになり、互いの存在を意識するまでになっていた。

京都国際・森下「嫌な予感はありました」

 森下は2年春も含めて2度甲子園のマウンドを経験。最速143キロの速球にキレのあるスライダーを混ぜながら緩急で打ち取るなどピッチングのうまさを見せる。打者としても評価が高く、今春のセンバツでも注目選手の1人として挙げられていた。だが、抽選会が終わり、いよいよセンバツモードに向かっていく3月上旬。寮内の控え選手に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことが分かる。そこからさらに1人、また1人……。忍び寄る見えない“敵”が、エースを不安に陥れる。

「最初は人数が少なかったので大丈夫と思っていたんですけれど、だんだん人数が増えてきて、もしかしたらという嫌な予感はありました。それが現実になっても受け止められない気持ちがありました」

 センバツ辞退は小牧監督から直接、宿泊先の部屋で告げられた。すでに隔離されている者や帰郷する者が出る中、学校内の寮は閉鎖され、森下は京都府福知山市の実家へ戻った。自宅でも外出は禁止され、何もかも制限がかかった中、家にいてもすることがない。体を動かしていることが日常である森下にとって、じっとしていることの方が違和感はあっただろう。そんな時、テレビをつければ当たり前のように流れているセンバツのテレビ中継。本来は自分がここで投げていたのに――。何とも言えない感情を抱きつつ、やはり心のどこかではセンバツは気になって仕方がなかった。

【次ページ】 「テレビで全試合の中継を見ました」

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