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プロ野球スカウトの評価が割れた「DeNAドラ1や日ハムドラ1と比較する声も…」北海道の高校生投手に“ドラフト候補”がズラリ…注目の3人
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/06/10 17:01
高校野球の春季北海道大会が行われた札幌・円山球場(写真は昨年の全国高校野球選手権・南北海道大会で)
1年秋から公式戦のマウンドに上がって、サウスポー特有のアンバランスさを全く感じさせないフォームから140キロ前後の速球を投げる。またバットを握れば、足元の難しいボールをきれいに持ち上げて、ライトに大アーチをかけていたので、その存在は早くから知られていた。
加えて、春先の練習で150キロをマーク。この大会直前の札幌支部予選で1試合20奪三振の報が知れ渡っていたから、本大会での奮投ぶりをみんな楽しみにしていた。
しかも、北海道では、門別啓人に迫る左腕ともいわれる知内高・坂本拓己との投げ合いだ。本人たち以上に「ネット裏」のテンションも上がる。
立ち上がり、門別啓人のボールが続けて高く浮く。坂本相手に、明らかに気負いが見える。フィニッシュで帽子が飛ぶ。力んで、首を振っている。
さすがに連打は許さないが、序盤3イニングは失投の甘いボールをジャストミートした打球が、時折り外野を襲う。
プロ野球スカウトの評価「ちょっと厳しい」「磨けば絶対光る」
それでも、右打者のふところに飛び込むクロスファイアーに、打者がすくむのがわかる。エラーがらみで同点にされた4回。なおも二、三塁のピンチに、打つ方も油断できない坂本を打席に迎え、カーブ、カーブで追い込んでおいて、空振り三振でピンチを切り抜ける。変化球でタイミングを外しにいく冷静さが残っていた。去年までの門別なら……前の打席でストレートをジャストミートされている坂本に、「リベンジだ!」とばかりに速球勝負にいって、やられていたのかもしれない。
自分のテンポを取り戻した中盤以降は、左打者には目から遠くにスライダーをきめ、右打者には内角を自慢のクロスファイアーでえぐって、計14奪三振。予選同様、本戦でも「三振の山」を築いてみせた。
「自分、左バッターのインコースでも勝負できます!」
聞き捨てならないことを言ってのけた。レベルが上がれば上がるほど、左腕に要求される高い技術。「それ」が出来たから、昨シーズン、阪神のルーキー・伊藤将司投手はペナントレースで「10勝」を上げることができた。
「当てちゃいけないと思うから死球になったり、甘く入るんで、逆に、体の近くに投げるんだから、当たってもしょうがない……ぐらいで投げれば行かないんです」
左打者のワンポイントリリーフは左投手……そんな「セオリー」がある中で、実は、左打者を苦手としている左腕が意外と多いという現実。そこもポンとクリアしているようだ。
「坂本のこと、ちょっと厳しいんじゃないかっていう人(スカウト)結構多いんですけど、ぜーんぜんそんなことない。磨けば光る、絶対光る。まだ見えてない部分が大きい。本人が本気で磨こうとすれば……だけどね」
こう語るスカウト……昨年に続き、北海道に現れた左腕の逸材に、評価も割れたようだ。