ぶら野球BACK NUMBER

“巨人史上最強の助っ人”がアゴに右ストレートで大乱闘…毎年言ってた「今シーズンで引退する」クロマティはなぜ球界の人気選手になった? 

text by

中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

PROFILE

photograph byBUNGEISHUNJU

posted2022/05/20 11:01

“巨人史上最強の助っ人”がアゴに右ストレートで大乱闘…毎年言ってた「今シーズンで引退する」クロマティはなぜ球界の人気選手になった?<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

ウォーレン・クロマティ。1984年~90年、巨人に在籍。NPB通算打率.321、951安打、171本塁打、558打点。“巨人史上最強の助っ人”と言われる

「プロのドラマーになりたいと思っているんだ。ボクはね、日本であと3年やって、33歳くらいで野球をやめたいんだ」

 焼き鳥屋で王監督のマンツーマン打撃指導を受け、1年目からチーム最多の35本塁打を放った背番号49は、2年目の85年も打率.309、32本塁打、112打点と文句なしの働き。

 シーズン末の骨折で無断帰国をかまして罰金100万円を科せられるオチはついたが、愛息に「コーディ・オー・クロマティ」と名付けるほどボスとの関係も良好。スタンドへのバンザイコール、拳を突き上げるガッツポーズに大きく膨らませた風船ガム、メジャー仕込みのヘッドスライディングのド派手なムーブの数々でクロマティはチーム屈指、いや球界屈指の人気選手へと登り詰める。

毎年の引退宣言「今シーズンで辞める」

 3年契約最終年の86年シーズンは打率.363、37本塁打、98打点、OPS1.095。ランディ・バース(阪神)の2年連続三冠王で打撃タイトルの獲得こそならなかったが、頭部死球を受けた翌日に入院先の病院から神宮球場へ直行し、代打でバックスクリーンに満塁ホームランを叩き込んだ名シーンは今でも語り草だ。終盤に原辰徳が骨折で離脱すると、四番打者として広島との熾烈なV争いを戦った。『週刊読売』86年10月26日号では、クロウに一発が出た試合はチームも26勝5敗2分けの勝率.839。勝利打点18、殊勲打30の驚異的な勝負強さを「ON級の活躍」と絶賛している。

 そして、3年契約を全うし予定どおりにミュージシャンへの転身……とはならず、大黒柱を球団も年俸1億8000万円の好条件で引き留め再契約。これ以降、クロウは毎年開幕前に「人生の中で、まだまだやらなきゃならないことがある。今シーズン限りで辞めて、大好きな音楽をやりたい」と宣言し続けることになる。グラウンドでは中日の宮下昌己から死球を受け激怒、マウンドへ走り相手の右アゴにパンチを見舞い、リーグから「出場停止7日間、制裁金30万円」の処分を受けたことも話題に。この87年シーズンは、ついに王巨人が初優勝。

 日本シリーズでは中堅を守るクロマティの怠慢守備を突かれ西武に敗れたが、メジャー時代のクロマティは一塁か左翼が専門という事情もあった。

【次ページ】 デビューしたのに売上げは3万枚で…

BACK 1 2 3 NEXT
ウォーレン・クロマティ
王貞治
読売ジャイアンツ
原辰徳
中畑清
ランディ・バース
中日ドラゴンズ
グレゴリー・ポランコ
アダム・ウォーカー

プロ野球の前後の記事

ページトップ