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ぶら野球BACK NUMBER
もし試合を休んでいたら…プロ野球初の4割打者だったクロマティ「来年は絶対に日本なんか行くものか」それでも再び巨人に帰ってきた真相
posted2022/05/20 11:02
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
BUNGEISHUNJU
年俸150万ドルで急転直下の巨人残留を決断するも、尊敬する王は去り、藤田元司が巨人監督に復帰。昭和が終わり、平成という新時代も始まった。もはや恒例行事の「今年で野球から足を洗う。来年からはミュージシャンとビジネスマンとしてのオレを見てくれ」宣言でキャンプインする日本6年目のシーズン。
『週刊ベースボール』89年4月17日号のスペシャルインタビューでは、チームリーダーを期待する声に対し「オレはスーパーマンじゃないから、ミスをすることもあるさ。そういう人間的なものを理解してくれた上で、リーダーとして認めてくれるんなら、ありがたいけどね」とか、「たくさんの日本の野球ファンにも名前を覚えてもらえたし、思い残すことはない。来年からはドラムを叩きながら“ジャイアンツ、マケタノ? ソウ、ガンバッテネ”と応援する側にまわりたいね(笑)」なんつって今度こそラストイヤーだと念押し。さらには「オレは希望的観測でものを言いたくないから、今年のジャイアンツは、はっきりいってラクじゃないと思うよ」なんて自軍の戦力を疑問視までする。もうクロマティはヤル気がないんじゃ……と誰もが疑う中、平成最初のシーズンが開幕。すると、売れないドラマーは開幕から神がかった打撃を披露する。
「幻の4割打者」もし試合を休んでいたら…
開幕から4割を超すハイアベレージで突っ走ったのだ。30試合消化時、20試合で2安打以上を記録。指を手術したことにより、プレーできない間は徹底的に下半身強化を行ったことが絶好調の要因と明かし、とにかく打ちまくった。5月18日時点でなんと4割7分台まで打率を上げ、にわかに夢の4割挑戦が騒がれ始める。そんな中、クロウは外国人記者クラブの懇親会に呼ばれ、「いろいろやりたいことがあるんで、とにかく野球は今シーズンが最後なんだ」と約130人の記者の前で宣言しなおした。広島戦では敬遠球を打ちにいき右中間へサヨナラ安打を放つなど勢いはとどまることを知らず、6月24日まで4割を超えていた打率はその後も3割8分~9分をキープ。チームは7月の11連勝で早々にペナント独走でV決定的。注目は故障の原に代わり四番を打つクロウの前人未到の大記録へ移る。