- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
“あの球審騒動”を収めた松川虎生の中学時代「監督、家に遊びにいってもいいですか」…“あるヤクルト選手”が見抜いた素質「もうプロのレベル」
posted2022/05/19 11:06
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Hideki Sugiyama
“球審詰め寄り騒動”の対応は「松川らしい」
4月24日のオリックス戦では、思わぬ騒動に注目が集まった。バッテリーを組んだ佐々木朗希が、ボールの判定をめぐって白井一行球審から詰め寄られる一幕があったのだ。この時、すかさず二人の間に割って入り、場をおさめたのが松川虎生だった。18歳とは思えない冷静な対応には球界内外から驚きと称賛の声が上がったが、少年時代からよく知る「貝塚ヤング」の関係者は、一様に「松川らしい」と口をそろえた。
「もちろんプロの世界でああいう振る舞いが出来ることには驚いているけどね。でも昔からあの子はあんな感じですよ」
そううなずくのは川端末吉監督だ。指導する子どもたちが過ごす中学の3年間は、思春期の難しい時期と重なる。大抵が大なり小なり反抗期の兆候はあるものだが、松川に限ってはそういった感情を一切態度に出さなかったという。
自身もキャッチャー出身で松川の中学2年時から指導していた船木秋雄コーチは、「そういえば、あいつが誰かとトラブルになっているのは一度も見たことがないね」と振り返る。
「打てなくて悔しがることはあっても、怒ったり泣いたり感情的になることはなかった。今思えば、あいつは同級生の中で一段上のレベルから物事を見ていたんじゃないかな。目標がもっと大きかったから。中学の時から覚悟があったんでしょうね」
リードや守備などキャッチャーの技術的なこともコーチが細かく教える必要はなく、いつも自分で楽しそうに研究していたという。
「道具もほんま大事にしていて、ミットを作るのも上手かった。タッチするときにボールが弾けないように自分で工夫して紐を張ったりね。頭がいいんですよ」
松川を変えた“中学2年時の大敗”
中学2年夏の全国大会「ヤングリーグジュニア選手権」では、悪夢のような経験をした。小園健太とのバッテリーでのぞんだ1回戦で滅多打ちにあい、0-9と大敗。小園が味方のエラーが続くなかで我を失い、四球を出したり長打を浴びるなど大崩れした。捕手の松川も責任を感じ、この試合以降は「自分が攻守でチームを勝たせる」と公言。主将となってからはさらにリーダーシップを発揮するようになった。