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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“2浪で早稲田合格→ドラ1指名”メジャーも経験した小宮山悟が浪人生に贈るメッセージ「1年や2年のブランクなんてどうってことない」
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph byAsami Enomoto
posted2022/05/05 11:03
早稲田大学野球部の小宮山悟監督。現役時代は多彩な変化球を駆使する球界屈指の技巧派投手として活躍した
のめり込んだ時と気が抜けてしまった時のギャップこそが、小宮山の人間としての魅力なのかもしれない。日本に戻った小宮山は、ふたたび1年間の“浪人生活”を経験し、バレンタイン監督の戻ったロッテにカムバックする。ストイックな小宮山が帰ってきたのだ。
「当時“浪人”をした理由は単純で、まだ投げられるから。トレーニングを積みながら解説の仕事をしていたんですけど、心の中でマウンドの投手に対して『こんな球なら俺の方がいいだろ』と思っていました。ロッテに復帰してからは、年齢による衰えをどうカバーするかを常に考えていましたね。チーム事情で俺の居場所がないことはわかっていたから、与えられた仕事を何でもしようって」
38歳で日本球界に復帰した小宮山は、その後44歳までプレーすることになる。起用法にこだわらない活躍を見せ、2005年にはチーム31年ぶりのリーグ優勝にも貢献。“球速80kmの魔球”シェイクを編み出すなど、言葉通り「持っている技術を駆使してアウトを取る」いぶし銀の投球術でふたたびその名を轟かせた。
母校・早稲田の監督に就任「これは使命だな、と」
引退後は解説者など多方面で活躍し、地元・柏レイソルの熱心なサポーターという縁もあって、2014年にはJリーグの理事にも就任した。そして2019年、母校である早稲田大学に監督として帰還する。近年、アマチュア球界にも“元プロ”の指導者が増えてきているが、小宮山ほどのキャリアを持つOBが大学野球の監督を務めるのは異例だ。
「石井連藏監督に現役引退の挨拶に行った時、『将来は早稲田に帰ってきてほしい』と言われていたんですよ。当時は『プロ出身者が早稲田の監督をやることはないだろう』と考えていましたが、石井監督の言葉はずっと頭にありました。だからこそ、正式にオファーをもらった時に『これは使命だな』と思ったんです。
大学で監督をやっていて感じるのは、学生たちを大人扱いするのは危険だということ。社会に出る前の最後の準備期間なのに、ちょっと浮ついているんじゃないか、と思うことは少なからずあります。大学までは自分の意思で野球をするわけですが、その先は求められないとプレーはできない。そのレベルに達していないのに、漫然と野球を続けたがっていたりする。厳しい言葉かもしれませんが、それは単なる“駄々っ子”です。だから学生たちには『己を知れ』と常に言っています」