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「トミを見たか? クリロナが警告を…」あのユングベリが冨安健洋の復帰戦で歓喜したワケ《ベルカンプ、アンリら無敵アーセナルOBも》
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph by James Williamson/Getty Images
posted2022/04/30 17:04
マンチェスター・ユナイテッド戦で復帰した冨安健洋。アーセナルのレジェンドも喜んでいた
実はユングベリはU-15、U-23監督時代、下部組織出身のブカヨ・サカを直接指導している。20歳になったサカがアーセナルの主力に成長し、マンチェスター・U戦でゴールを決めたのだから、喜びもひとしおだったのだろう。
45歳のスウェーデン人は、英スポーツサイト・アスレティックのインタビューで、そのU-15監督時代を振り返っていた。「最近の若い選手は、我々の世代とはまったく違う考え方をする。私はまるで恐竜のようだった」と言う。指導では、技術的な側面はもちろん、人として精神的に成長させることにも重きを置いた。
「私が母国スウェーデンでプロ選手になったのは16歳の時。でもキャリアをスタートした当初は、私が練習時間まで家でのんびりしているのを、父が許してくれなかった。練習開始は15時だったが、毎朝6時に父と家を出て、工事現場で働いていたんだ。13時に昼食を取り、バスで1時間かけて移動して、チーム練習に参加していた。あの時はとてもイライラしていたが、おかげでプロサッカー選手がいかに恵まれた環境にあるかを身をもって知ることができた。
だから、アーセナルの若手にも2日間は工事現場で働かせたいと思っていた。朝6時に現場に入り、16時に仕事を終える生活をさせたかったんだ。サッカーだけでなく、生きていくことの厳しさを知ってもらうためにね。アーセナルユースの若手に体験させることは叶わなかったが、こうした考えは、私が下部組織に持ち込もうとしたことのひとつだ」
マンU戦にはアンリ、ベルカンプ、レーマンらも!
マンチェスター・U戦に足を運んだクラブOBは、ユングベリだけではなかった。「インヴィンシブルズ(無敵の者たち)」と謳われた2003-04シーズンの無敗優勝時のメンバーで、ティエリー・アンリとデニス・ベルカンプ、ジウベルト・シウバ、イェンス・レーマンの姿もあった。
アーセナルでナンバー10を背負ったベルカンプにいたっては、試合前にサカとエミル・スミスロウのイングランド出身選手を集め、若い彼らにアドバイスを送っていた。
52歳になったベルカンプは「私は現役時代、イングランドの選手から多くのことを学んだ。彼らは“イングリッシュ・フットボール”の何たるものかを知っていたし、アーセナルでプレーすることの意義も教えてくれた」と説明し、「攻撃的にプレーし、情熱を持って戦う──。君たち、イングランド人なら理解していると思う。それらをチームに注ぎ込んでほしい」と2人に訴えた。
10番を引き継いだスミスロウはレジェンドの言葉に聞き入り、サカは何度もうなずいた。その傍らで、アンリは父親のような表情で若い2人の顔を交互に見つめていた。