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「ああ、君が取材に来てくれた日本人記者か」中島翔哉や中村航輔が奮闘、元浦和ポンテが副会長…“異色”のポルティモネンセに密着潜入
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGlobal Imagens/AFLO
posted2022/05/19 11:01
ポルティモネンセのホームゲームでの中島翔哉。中島や中村航輔が所属するクラブの実情とは?
スタジアム脇のグッズショップに入ると、壁に笑顔でプレーする中島のパネルが掲げられていた。他にも、駐車場の壁やプレスルームの出入り口など至るところに中島の写真があり、このクラブにおける彼の存在の大きさを感じた(その理由については、次回の記事で説明する)。
「中島は攻撃の組み立て役としてよくやっている」
この日の試合は、今季のポルティモネンセにとって極めて重要だった。
ポルトガル1部は18チームで構成され、34節を戦う。17位以下が自動降格し、16位は残留を懸けて2部3位とプレーオフを行なう。
試合前の時点で、ポルティモネンセは7勝8分13敗の勝ち点29で12位。ただし、16位との勝ち点差は4しかなかった。一方、対戦相手のファマリコンは勝ち点28の14位で、残留を争う直接のライバルである。
この試合を含めて、残り6試合。ホームゲームでもあり、是が非でも勝ち点3を獲得して残留の可能性を大きく高めたいところだった。
クラブ職員に会長招待者用ボックス席まで案内してもらったが、試合までまだ1時間以上ある。1階上のメディア関係者席へ出向き、地元記者に話を聞くことにした。
比較的暇そうにしている中年の男性に話しかけたら、この日の「ア・ボーラ」(ポルトガルの代表的スポーツ紙)で試合のプレビューを執筆したベテラン記者だった。
今季のチームの出来、日本人選手について聞くと、こう返ってきた。
「前半は予想以上に健闘した。しかし、冬の移籍期間中に中心選手2人が移籍したのが痛かった。彼らの穴が埋まらず、以後、ズルズルと成績が落ちてきた。
中島はまだ故障の影響が感じられるが(注:昨年2月、腓骨骨折と足首の靭帯損傷の大怪我をして手術を行ない、治療とリハビリに約8カ月かかった)、攻撃の組み立て役としてよくやっている。ただ、彼からの決定的なパスを決め切れる選手がいない」
昨年1月に柏レイソルから移籍したものの、ここまで控えの立場に置かれているGK中村は「能力は高い。出場したときはよくやっている」。昨年8月に入団した川崎については「U-23のリーグに出場しているようだが、トップチームではまだプレーしていないのでどんな選手かわからない。クラブ関係者によれば優秀な若手だということなので、来季以降の活躍を期待している」ということだった。
中島はセカンドストライカーとして奮闘していた
試合開始が近づき、両チームの先発メンバー表が配られた。中島は先発で、中村もベンチ入りしている。
やがて、選手たちが入場してきた。身長164cmの中島は、ひときわ小さい。