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「ああ、君が取材に来てくれた日本人記者か」中島翔哉や中村航輔が奮闘、元浦和ポンテが副会長…“異色”のポルティモネンセに密着潜入
posted2022/05/19 11:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Global Imagens/AFLO
縦長の長方形のような形状をした欧州最西端の国ポルトガルの、底辺の左角に近い海沿いに、ポルティモンという人口6万人足らずの町がある。
「欧州で最も美しいビーチの1つ」(ガイドブック)が売り物のリゾート地で、中心部には小ぶりな港、中世に建てられた美しい教会、しゃれた遊歩道があり、落ち着いた街並みが広がる。町の人々は、素朴で人情味がある。
この極めて居心地の良さそうな町に本拠を置くのが、ポルトガルリーグ1部で奮闘するポルティモネンセである。現在1部で戦うクラブの大半が北部と首都リスボン周辺に集中しており、リスボンより南にあるのは本土ではこのクラブだけだ。
ポルトガル1部の優勝はほぼ常にポルト、スポルティング、ベンフィカの3強によって争われ、中位以下のクラブにもそれなりのヒエラルキーがある。ポルティモネンセにとってのノルマは、常に1部の舞台で戦い続けること、である。
次回の記事で詳しく触れるが、ポルティモネンセはクラブのオーナー、会長、副会長が揃って日本と日本人と日本のフットボールを熟知するブラジル人。スポンサーに多くの日本企業を取り込み、日本人選手がトップチームに3人(元日本代表のFW中島翔哉とGK中村航輔、若手FW川崎修平)、U-23にも3人が在籍し、マッサージ師も日本人という欧州では異色のクラブである。
1万人弱の収容人数、日本企業の看板
筆者は4月上旬から中旬にかけてポルティモンに滞在し、クラブとその関係者を取材してきた。
4月9日夜、現地に到着して海が見えるアパートに落ち着くと、翌日、本拠地ポルティモン市営スタジアムで行なわれるポルトガルリーグ第29節のファマリコン戦の観戦に出かけた。
スタジアムの収容人数は、1万人弱。特に豪華ではなく、大きくもない。しかし、市の人口の約16%を収容する、と考えると印象が変わってくる。
スタジアムの外壁には、スポンサーを務める日本企業の社名が書かれた看板が並ぶ。中には、表記が日本語のままのものもある。
「ああ、君が取材に来てくれた日本人記者か」
クラブ広報を通じてメディアパスを申請していたのだが、スタジアムの受付へ着くと、偶然、ロジネイ・サンパイオ会長に出くわした。
この時点ではまだ面識がなかったが、写真で顔を知っていたので「会長さんですよね」と思わず話しかけた。すると、「ああ、君が取材に来てくれた日本人記者か」と応じてくれ、頼みもしないのにその場で職員に命じて「カマロッチ・プレジデンシアル」(会長招待者用ボックス席)への招待状を発行してくれた。