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イタリア全土がロナウドフィーバー。
彼はなぜ、ユベントスを選んだのか。
posted2018/07/25 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
「僕はまだまだ若い。僕はつねにチャレンジを欲している。幸運なことに僕はこれまで夢のようなキャリアを過ごしてきたが、ここでもきっと上手くいくはずだ」
クリスティアーノ・ロナウドがユベントスへやってきた。
黒船襲来どころの騒ぎではない。お膝元トリノだけでなくイタリア中が完全に“クリロナ”という熱病を患ったようだ。
16日に電撃的に行われた入団会見の後も、地中海の猛暑の中でユベンティーノたちは未だ現実と夢の間を彷徨っている。
“白い巨人”レアル・マドリーから“老貴婦人”ユベントスへ、世紀の移籍劇は急ピッチで決まった。
6月末にポルトガル代表がロシアW杯で敗退すると、ロナウドの大物代理人メンデスは、7月4日にレアルのペレス会長と面談。ロナウドとの冷えた関係改善を促したが話し合いは決裂した。
移籍候補の1つだったパリSGがFWネイマールの不透明な動向とファイナンシャル・フェアプレー制度との兼ね合いのために躊躇したことで、脈ありと見るやユーベは獲得に名乗りを上げ、具体的交渉と資金計画を入念に進めた。
イタリア中がW杯そっちのけに。
7月10日、アニェッリ会長自らロナウドの休養先であるギリシャのリゾート地にプライベートジェット機で自ら乗り込むと、移籍金1億ユーロ(約130億円)、年俸3100万ユーロ(約40億円)の4年契約へサインさせることに成功したのだった。
移籍話が浮上してからイタリア紙はロシアW杯そっちのけで、真面目な起用法議論から過去の女性遍歴に至るまで完全にロナウド一色に染まった。正式決定後はユーベのユニフォームが国中で文字通りバカ売れ中だ。
本拠地トリノでは、オリーブとトマトで背番号7をかたどったピッツァやポルトガル産リキュールを使った特製ジェラートやカクテルを出す店が続出。注文名はすべて「CR7」だ。
地元の旅行業専門家は「('06年の)トリノ冬季五輪は2週間だけの期間限定イベントだったが、ロナウドの入団は(世界遺産レベルの)名所がやってきたのと同じ」と評し、波及効果によってトリノ市圏の観光業界の年間総売上は10%押し上げられる、と分析した。