セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
Mr.ユーベが禁断のインテル就任。
勝利に執着する闘将コンテの原点。
posted2019/06/13 11:45
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
闘将アントニオ・コンテがセリエAに帰ってきた。5年ぶりに母国で指揮をとる新天地に選んだのはインテルだ。
コンテがグラウンドで用いるボキャブラリーはあまりに過激で、地元紙がS・キューブリックの傑作戦争映画になぞらえて『フルメタル・コンテ』と見出しを打つことも珍しくない。
“ふざけるな! 大声を出せ! タマ落としたか!”
海兵隊の鬼教官ハートマン軍曹よろしく、コンテは長くタイトル争いから遠ざかっているインテルの選手たちを叱責し、罵倒し、しごきまくるだろう。やると言ったらやる。有言実行の男コンテの帰還は、来季のセリエAを俄然面白くしてくれるにちがいない。
就任にあたって、コンテは「世界のトップレベルに返り咲くというクラブの本気度に感銘した。だからオファーを受けた」と述べた。彼は偏執的ともいえる勝利への執着心で知られている。
ユベントスでスクデット3連覇を果たし、イタリア代表を率いて躍進を遂げ、チェルシーではプレミアリーグも制した。今や名将と呼ぶに値する男だが、やはり闘将か鬼コーチという肩書の方がよく似合う。
ユベンティーノたちは「裏切り者!」
監督として3年、現役時代に13年を過ごし主将まで務めた生粋のユベントスOBが、互いに激しいライバル感情を持つ仇敵インテルの指揮官に就任したのだから、波風が立たないわけがない。
就任が発表されて以来、一部のユベンティーノたちは「裏切り者!」と声高に叫び、歴代のインテルOBたちも御意見番ベルゴミのように賛成派もいれば、元DFマテラッツィのように「過去は消せない」と公に反発する者もいて、コンテには逆風が吹いている。