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BIGBOSSに3タテの洗礼…ホークスはなぜ、奇策に動じなかったのか? 逆転満塁弾を導いた“藤本采配の妙”《新庄劇場のウラ話も》
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2022/03/28 17:03
プロ野球2022年シーズンが開幕。“常勝軍団”ホークスは、BIGBOSS日ハムを相手にどう戦ったのか
「やりづらい? いや、何をやってくるか分からないと言うけどさ、野球をやることに変わりはないじゃない。別に一塁からいきなり三塁に走るわけじゃないでしょ(笑)。ルールにないことはやらないよ。千賀くんとかも、そんな風にコメントしてたじゃない」
メディアが意識過剰に「シンジョーシキ」と煽り、ファンも熱くなっていたが、ホークスの内部はいたってシンプルに物事を捉えていた。
3タテのポイントは「開幕戦のグランドスラム」だった
果たして臨んだ開幕3連戦で、ホークスはしっかり3連勝を飾った。前日よりその日、それより次の日と、チーム力の差をまざまざと見せつけたような3試合だった。
だが、完勝とは言い難い。最大のポイントは開幕戦だ。ホークスとしては、危うく新庄イリュージョンに飲み込まれるところだった。開幕投手の千賀はソロ本塁打の1点のみに抑えるも、打線が小刻みな継投の前に決定打を欠いた。
0-1のスコアで八回裏までやってきた。展開でいえば、完全に負けゲームだった。
しかし、救世主が現れた。1死満塁とこの日最大のチャンスで、途中出場していた新外国人のフレディ・ガルビスが低い弾道ながら右翼テラス席に突き刺さる来日1号逆転グランドスラムを放ったのだ。
藤本采配の妙がここにあった。ガルビスはメジャー109発を誇る大物助っ人だ。コロナ禍の影響で来日は3月4日までずれ込んだが、藤本監督はキャンプ時から「開幕には間に合うと思う」と構想を自ら口にするほど大きな期待を寄せていた。チームに合流して2日後にはオープン戦で起用。しかし、調整遅れは否めずに5試合で15打数3安打7三振、打率2割と振るわなかった。開幕直前期間には山口県・由宇での二軍戦に出場するも2試合で9打数無安打3三振とさっぱり。藤本監督は開幕スタメンから外すことを決断した。