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BIGBOSSに3タテの洗礼…ホークスはなぜ、奇策に動じなかったのか? 逆転満塁弾を導いた“藤本采配の妙”《新庄劇場のウラ話も》
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2022/03/28 17:03
プロ野球2022年シーズンが開幕。“常勝軍団”ホークスは、BIGBOSS日ハムを相手にどう戦ったのか
サプライズのために…徹底した情報管理
このところ新聞記者たちも自分の媒体に書くのと変わらぬ情熱を注ぎSNSで情報発信を行う傾向がやたら強い。サプライズを成功させるために、万が一の情報漏洩を防ぐ目的だったのか?
「その理由もなくはないですけど、一番は新庄監督が台本通りにやっていただけるか分からないと思ったので(笑)」
始球式だってそうだ。打席に立つまではよくある話だが、フジテレビの井上清華アナの投球を空振りではなくまさかの素手キャッチ。そのままマウンドにダッシュしてボールを手渡しした。BIGBOSSも井上アナも満面の笑みだし、スタンドも大きな笑いに包まれていたが、中継映像でパッと映された一塁側ダグアウトの藤本監督は眉一つ動かない表情でそれをじっと見ていた。
BIGBOSS野球にホークスナインは困惑した?
「(開幕カードの)3連戦は遊びます」
開幕3日前のイベントの中での新庄BIGBOSSの発言は波紋を呼んだ。
本人はいつものように悪気なんてサラサラ無いのだろうが、我々メディアは扇情主義なところがある。藤本監督にわざわざその感想を求めた。「いいんじゃないですか。こちらは真剣に戦うのみです」と大人の対応。さらに誰よりも厳格なイメージの強い王貞治球団会長にも「彼は言葉遊びをしているだけでしょう」と静かに返されたが、2人とも腹の奥底は相当熱くなっていたに違いない。
BIGBOSSの「遊び」の真意はともかく、注目の采配は奇想天外かつ予測不能な新庄ワールド全開だった。
開幕投手に指名されたのはドラフト8位新人でクローザー候補の北山亘基だったし、開幕スタメンも同様だ。当日朝のスポーツ紙も開幕予想オーダーはどこもバラバラ。「7番サード佐藤の1つしか当たってません……」「いや、ウチはゼロなんですけど……」とハム担が悲哀な声を上げる。キャンプもオープン戦もずっと張り付いている番記者が取材に基づいて導き出してもまるで正解が分からない。こんなのも前代未聞だった。
正直、ホークスも、相当困り果てたはずだった。データ野球全盛の時代。ホークスは特にその最先端を行く球団だ。どこか本能的に野球をしていると思われがちな松田宣浩や柳田が、試合後には誰より真っ先にダグアウト奥の素振り部屋のトビラ前を通過したところにある資料室に向かっている。ホークスにはそんなチームカラーがある。
開幕前、藤本監督が語っていたこと
常識にとらわれない新庄BIGBOSSの「シンジョーシキ」に何を感じ、どう考え、いかにして立ち向かうのか。