あるいは、ホークスは新庄BIGBOSSさえも驚かすような秘策を練っているのかもしれない。開幕戦の直前までそれを探らなければならないと考えた。取材活動にもより力が入った。

　藤本監督は相手継投の対策について、こんな風に話をしてくれていた。

「（開幕投手の）北山はオープン戦で短いイニングしか投げていない。ベンチには伊藤大海も入るんでしょ。その辺りがロングリリーフで来るんじゃないですか。相撲の“猫だまし”じゃないけど、2イニング目から本当の先発ピッチャーが来る可能性もある。あるいは継投、継投、継投かも。まぁ、どっちで来てもさ、こちらはどんなピッチャーでも打てばいいんですよ。普通は最初の打席ならば、その先発投手と2、3打席勝負があると考えて『ボールを見ていこう』となるけど、どんどん振っていってくれという話をしていますよ。試合終盤にリリーフと対戦する時の集中力で行ってくれればいいと思いますよ」

柳田、千賀は？ 「なにか仕掛けてきても…」

　なるほど。では、肝心の選手の方はどう考えているのだろうか。

　答えてくれたのは主砲・柳田だ。通常、バッターはまず相手先発の研究を欠かさない。前の晩にスマホで映像をチェックするのもそう。スコアラーから選手別に渡される資料も基本的には先発対策だ。だが、最初から短い回しか投げないのが分かっていて、さらに2番手以降の継投も読めないとなると、どんな対処をするのか。

「オープン戦みたいな感じじゃないですか。来たピッチャーの甘い球を打てるように、それだけやります」

　ん、それだけ？　シンプル過ぎるが、不真面目に答えたわけではない。真剣に、ただそれだけを考えていた。

　一方、投手だって相手打者の顔ぶれや並びが分からなければ、研究するのも一苦労だ。しかし、ホークス開幕投手の千賀滉大もメディアに対してやはり真っ直ぐに視線を向けてこう答えた。

「なにか仕掛けてきても、自分の球をちゃんと投げれば何も問題ない」

ソフトバンクのエース千賀 ©BUNGEISHUNJU

工藤前監督「一塁からいきなり三塁に走るわけじゃないでしょ（笑）」

　さらに、こんな人にも話が聞けた。昨季まで7年間ホークスの指揮を執った工藤公康氏がテレビ解説でPayPayドームを訪れていたのだ。工藤前監督といえば、とにかく研究熱心で膨大な時間をかけてあらゆる準備をして戦いに臨んでいた印象しかない。

　何を仕掛けてくるか予測不能な相手に立ち向かう場合、どう対処するのか。

【次ページ】　3タテのポイントは「開幕戦のグランドスラム」だった