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MLB大低迷を救ったのは野茂英雄26歳だった…当時の報道から探る“フィーバー”の真相「荒廃していた野球界に旋風を起こしている」 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2022/03/11 11:03

MLB大低迷を救ったのは野茂英雄26歳だった…当時の報道から探る“フィーバー”の真相「荒廃していた野球界に旋風を起こしている」<Number Web> photograph by Getty Images

1995年、メジャーリーグに挑戦して大旋風を巻き起こした野茂英雄

「野茂=救世主」の論調も登場

 同日のニューヨーク・タイムズ紙は、「いつまでも金もうけと権力争いにうつつを抜かしているベースボールに愛想をつかし、ファンたちは無視を決め込んだ」と観客動員数を大きく後退させた原因のストライキを改めて糾弾し、こう書き連ねた。

「ベースボールは行動を起こそうとしている。ここしばらくお目にかかることのできなかった最高の舞台を、ファンのために提供してくれるのである。今年はテキサス州アーリントンで開催されるオールスターゲームで、野茂対アメリカンリーグ打線の対決を見られることになりそうだ」

 野茂氏がオールスターゲームで2回1安打無失点3三振と好投すると、「野茂=救世主」的な論調も、一気に広がったようだ。

 すでに地元ロサンゼルスでは、1981年のストライキ明けに活躍したドジャースの名投手でメキシコ出身のフェルナンド・バレンズエラと比較する記事が書かれていた。当時の「フェルナンド・マニア」と「ノモ・マニア」を比較しながら、野茂氏とバレンズエラが共に、「ファンの信頼を失ったメジャーリーグを救った」と書いた。

信頼回復のために、今回も「話題作り」が必要になる

 中には1919年の「ブラックソックス事件(ホワイトソックスの選手が八百長したとして永久追放になった)」で信頼を失ったMLBを救ったとされる本塁打王ベーブ・ルースや、人種差別と闘いながら史上初の黒人選手として活躍したジャッキー・ロビンソンらと比較する記事もあった。

 野茂氏は同年、13勝6敗、防御率2.54、236奪三振の活躍でドジャースの7年ぶりの地区優勝に貢献し、ナ・リーグ新人王に選出されているが、ストライキ明けからオールスターゲームまでのほんの数カ月の活躍で、MLBの信頼回復に寄与したというのは、米メディアが伝える通りである。

 ファンの信頼回復のためには今回も「話題作り」が必要だ。野茂氏のように、その中心に大谷翔平選手や、今年から「メジャー挑戦」する鈴木誠也外野手らの日本人選手がいたとしても、何ら不思議はないのである――。 【村八分編につづく】

#2に続く
《MLB労使問題の闇》メジャー初昇格の日、ベンチの端にぽつりと座って…“村八分”にされたメジャーリーガーの悲しい夜

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