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南野拓実に出番なしもリバプールが今季初タイトルを獲得! 「国内第2」のカップ戦決勝が「120分間、立ちっぱなし」の極上の一戦になった理由
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2022/03/03 17:01
死闘の末にチェルシーを下したリバプールが9度目のカップウイナーに。両チームの質の高い攻防は決勝に相応しいものだった
名勝負の背景にあったトゥヘルの采配
120分間のスコアレスが、見応え十分となった背景にもトゥヘルの采配がある。カップ戦決勝では通算3度目の顔合わせにして最高の一騎打ち。アグレッシブな入り方は予想外だったが、クロップが「立ち上がりは明らかに敵が勝っていた」と認めるほど功を奏していた。
チームの積極姿勢は、前回の決勝対決に当たる2012年FAカップ決勝のチェルシーとは大違い。当時のチームは暫定監督だったロベルト・ディマッテオの下、アンドレ・ビラス・ボアス前体制下での取り組みが失敗したハイラインが、ローブロックに改められていた。そんなチェルシーの先制点は相手のミスがきっかけだった。
両チームの得点は、ディディエ・ドログバとアンディ・キャロルが決めている。特に、リバプールのケニー・ダルグリッシュ監督がパワープレー要員として投入したキャロルは、スコア上の逆転はならなかったものの、ことごとく空中戦を制して形勢逆転を可能にするインパクトをもたらした。
カイ・ハバーツが「偽9番」役を全う
10年後の今回、同じウェンブリーのピッチに登場した両軍のスタメンに純粋なセンターフォワードはいなかった。トゥヘルは、昨夏に140億円台の移籍金で獲得したロメル・ルカクではなく、カイ・ハバーツを前線中央で起用した。
最近の調子と自信に加え、クレバーな動きと前線からの守備意欲でも適任と判断されたハバーツは、開始早々にクリスティアン・プリシッチがケレハーのセーブに遭った決定機を演出。後半にはメイソン・マウントが決めるべきだった絶好機を提供した。また延長後半の110分には、VARでオフサイドが確認されたとはいえ自らネットも揺らし、「偽9番」役を全うした。
「世界最高の攻撃的チームとも言える相手との戦いだったのだから」と、無失点に触れたトゥヘルの自軍評にも一理ある。リバプールが誇る3トップは、背後で糸を引くチアゴ・アルカンタラがウォームアップ中の怪我で急遽欠場となる不運に見舞われても、それぞれゴールに迫った。