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南野拓実に出番なしもリバプールが今季初タイトルを獲得! 「国内第2」のカップ戦決勝が「120分間、立ちっぱなし」の極上の一戦になった理由
posted2022/03/03 17:01
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
たかが「国内第2」のカップ選手権、されど「シーズン最初」の主要タイトルマッチ。トーマス・トゥヘル率いるチェルシーと、ユルゲン・クロップ率いるリバプールという、CL優勝歴も誇る両軍による今季リーグカップ決勝は、欧州トップレベルの火花が飛び散る名勝負となった。
「120分間、立ちっぱなし」
そうメールを送ってきたのは、サポーター4万人ずつが半々に配されたウェンブリー・スタジアムの“赤コーナー”で、大会史上最多となる9回目のリバプール優勝を見届けた筆者の隣人だ。
ケパ投入は戦前プランの一部だった
実際のところは、延長戦後に11-10で決着がついたPK戦の約15分間も、上質のスリル連続にじっと座っていることなどできなかったはずだ。両軍イレブン総出のPK戦には人間ドラマ風の魅力もあった。決勝まで勝ち上がる過程での貢献を評価したクロップが「世界最高のGK」と呼ぶアリソン・ベッカーをベンチに置き、人情的に決勝でもゴールを任せたキービーン・ケレハーが、リバプール11人目のキッカーとして勝敗を分ける1本をゴール左上隅に決めたのだ。
結果的に、チェルシー11人目のGKケパ・アリサバラガが吹かしたPK失敗で幕を閉じたことから、国内メディアでは延長戦終了間際に正GKエドゥアール・メンディを交代させたトゥヘルの「ギャンブル失敗」と報じられている。指揮官自身も「責任を求められるべき人間がいるとしたら、それは監督である自分だ」と語っている。
しかしながら、ケパはもちろん、トゥヘルも責める気にはなれない。
チェルシー陣営にとって、ケパ投入は戦前プランの一部だった。PKを決めるのではなく、PKを止める確率の高さを理由に送り出された控えGKは、実際に手に触れたイブラヒマ・コナテの1本を含め、キックへの反応は相手GKよりも上だった。
そもそも、3回戦と4回戦でのPKストップ2本を含め、準決勝までは先発してセーブを重ねたケパの活躍がなければ、チェルシーの決勝進出は怪しかった。試合後のクロップが「世界最高のナンバー2」と評したケレハーと同様、チェルシーの2番手も決勝のピッチに立つ資格はあったのだ。