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ルーキー初キャンプからスゴかった「4人の打者」立浪和義、松井秀喜、高橋由伸…“もう1人の男”が今季巨人のカギを握る?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2022/02/12 11:02
1993年2月1日、初めてのキャンプに臨むルーキーの松井秀喜
しかしあまりに様々なことを起こし、起こりすぎたシーズン中の移籍に、いきなり巨人のユニフォームを着てグラウンドに立っても、中田自身がうまく適応し切れていなかったように見えた。肝心のプレーが、どこか借りてきた猫のように小さくなっていた。本当の中田ではなかったように思えた。
減額制限を越える1億9000万円の減俸
そもそも昨シーズンは腰痛を抱えて、思うようなプレーができずに、どんどん負のスパイラルにはまっていったシーズンだった。その結果、移籍した巨人でも2度の二軍落ちを経験して、最終的には34試合の出場で打率1割5分4厘、3本塁打の7打点という成績に終わっている。そうしてオフの契約更改では減額制限を越える1億9000万円減俸の推定年俸1億5000万円で、巨人でのリスタートの契約を結んだのである。
だからこそ2022年は再起をかけたシーズンのはずだ。 プレーヤー・中田翔のリスタートを、もうとやかく言うべきではないだろう。
中田自身がやらねばならないことは、選手としての自分を取り戻すことしかない。入団1年目に見せたあのレフトポール際に真っ直ぐ伸びていく打球。最初からあんな打球を打てた天性の才に、もう1度、磨きをかけてグラウンドに立つことである。“大将”と呼ばれ、若手選手からある意味、慕われ、ある意味、畏敬の念で見られていた日本ハム時代の振る舞いを取り戻すことではない。プレーも振る舞いも、すべて大人になった中田翔として戻ってくることなのである。
一塁のレギュラー争いは熾烈だ。
中田を軸に中島宏之内野手にゼラス・ウィーラー内野手もいる。場合によっては廣岡大志内野手や新外国人のグレゴリー・ポランコ外野手が回ってくることもあるかもしれない。北村拓己内野手やいまは育成契約の香月一也内野手、もちろん期待の秋広優人内野手が台頭してくる可能性だってないわけではない。
ただ守備力を含めて、もし一塁手を固定するとすれば中田が最有力候補であることは、誰の目にも明らかなはずである。
「しっかり振れている、もちろん力でね。久しぶりの外なので、ちょっと打球を上げにいってしまうというか、そういうのはあったのですけど、しっかり振れていた。ホームランとかは別にしてライナーでも打球の質というか、自分の打っている感覚ですけど、やっぱり去年とは全然、違うと思います」
屋外フリー打撃の最後は狙ってスタンドに放り込んだ中田は、ここまでの仕上がりに、こう自信の言葉を語った。
今年の巨人のカギを握る選手の1人となることは、間違いなさそうである。
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