それをプロ1年目からできる。そのバットさばき、打球の質というのは、やはり天性のものであり、中田翔というバットマンの特別さを感じたところでもあった。

　その中田が紆余曲折を経て“再起”へと踏み出したのが、今年の巨人・宮崎キャンプだ。

原監督「かなり賭けるものが見えますね」

　筆者が直接、打撃練習を見たのは、独自調整が認められているS班が練習する木の花ドームだった。打球音が響く狭い室内でのバッティングで打球の行方も確認できない。打球の質や飛距離はなかなか判断できないが、それでもスイングのキレの良さが目を引いた。オフに食トレに励んで体重を20kgも増やしたと伝えられ、見た目もひと回り大きくなったように見える。それにも増して身体のキレも去年とは打って変わっていた印象だった。

「かなり賭けるものが見えますね」

　その姿に原辰徳監督がこう語ったのは、2月6日のキャンプ初の屋外でのフリー打撃後だった。

　73スイングで柵越えは10本。

「寒すぎです。風邪ひきそうや」

　気温9度で強い向かい風の中での屋外打撃にこう語った中田本人だが、調整は順調に進んでいるのは確かである。

　さまざまな意見が渦巻いた去年の移籍劇。日本ハムでチームメイトへの暴力行為で無期限の出場停止処分を受けながら、巨人への電撃トレードで処分も停止され、移籍後にすぐにグラウンドに戻ってきた。

©︎Hideki Sugiyama

借りて来た猫のように小さくなっていた

　この復帰劇に時期尚早という意見があるのは当然で、筆者もそう思った1人である。ただ、唯一、ストップをかけられる権限があったはずの斉藤惇NPBコミッショナーも容認して、処分解除と移籍は既成の事実となった。その意味では巨人の選手として出場することを、中田本人が責められる立場でないのは言うまでもないことだった。

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