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24年前に消えたあの「巨人軍の多摩川グラウンド」、今は何がある? ジャイアンツの選手に恋した“多摩川ギャル”を知っていますか?
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byKYODO
posted2022/02/08 11:01
写真は1969年の2月キャンプ。多摩川グラウンドで練習する巨人の長嶋茂雄(左)と王貞治
エリアとしては田園調布の一帯に含まれるが、駅としては多摩川駅。そうした場所に河川敷グラウンドはあった。よみうりランドと比べたらだいぶ都会である。そんなところでスター選手たちが練習をしていたというのだから、なんとも贅沢である。巨人軍の練習には女性ファンも詰めかけ、“多摩川ギャル”と呼ばれ、黄色い声援が飛んだという。
多摩川駅の外に出て、多摩川浅間神社の鎮座する高台を回り込むようにして歩くと、そこはもう多摩川の河川敷だ。河川敷沿い(というかもはや土手の上)を通っている道を上流に向かって歩いてゆく。何かの抜け道になっているのか、クルマ通りが意外に多い上に歩道も狭いからちょっとおっかない。
おっかないなあと思いながら多摩川に沿ってしばらく歩く。川の向こうはもう神奈川県で、多摩川を渡って武蔵小杉のタワーマンション街へ走っていく東横線も見える。巨人軍がこのあたりで練習していたときには、タワマンはなかったんだよな……。
などと思いを巡らせながら10分くらい。多摩川の川っぺりに降りられるところがあった。降りてみると、まさに河川敷というか、大雨で水かさが増したらこのあたりも完全に浸かってしまうのだろうなという川の際だ。実際、巨人軍のグラウンドも何度か台風で浸水して使えなくなってしまったことがあるそうだ。
冬だから、枯れ木に枯れ草、どこからか流れ着いた流木のようなものもあった多摩川の河川敷。多摩川なのだから水際まで整備されてコンクリートに覆われているものだと思っていたが、必ずしもそうではないらしい(ちなみに、2002年にアザラシのタマちゃんが現れたのもこのあたりだ)。川の向こうに武蔵小杉のタワマン街、少し上流方面を見ると川崎フロンターレの本拠地・等々力競技場も見える。背後には田園調布の高級住宅地。そういう場所に挟まれた多摩川の河川敷は、夕暮れどきだからなのかなんだか寂しい。
消えた「巨人軍多摩川グラウンド」、今は何がある?
犬の散歩をしているおじさん、寒いなか連れ立って散歩している夫婦を横目に川っぺりを少し歩くと、背の低い外野フェンス(というか外野ネット)に囲われた野球場が見えてくる。A・Bの2面あるようだ。近づくと、「有料なので勝手に入らないでね」といったような注意書きが掲げられている。
この野球場こそが、かつての巨人軍多摩川グラウンドである。