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野球クロスロードBACK NUMBER
《沢村賞右腕》元ソフトバンク攝津正(39)が今明かす“悩んだ27歳のプロ入り”と“苦節のラスト3年”「うまくいき過ぎたんじゃないかな」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/01/04 11:04
09年に最優秀中継ぎ賞、12年には沢村賞を獲得したホークスの元エース右腕・攝津正
だからもう一度、気持ちを奮い立たせようとはした。でも、無理だった。
「一度は『辞める』って決めてしまったんで、そんな気持ちで投げていても厳しいだろうなと思ってはいました。嫁やお世話になった人たちからありがたい言葉はもらいましたけど、8割方は気持ちの整理がついていました」
二軍のローテーションを守り、シーズン終了後の教育リーグでも2試合に投げた。それは、「最後までしっかり投げて終わりたい」という、攝津にとってのけじめでもあった。
「うまくいき過ぎたんじゃないかなと」
11月に正式に戦力外通告を受けた。公には「現役続行」の意思を示したが、本心からの宣言ではなかった。
19年1月8日、攝津は引退した。
プロ10年の通算成績は、282試合の登板で79勝49敗1セーブ82HP、防御率2.98。机の上で成績表を広げれば、あるいは「晩節を汚した」と評する人間がいるかもしれない。
断じて違う。攝津はプロに挑戦し、やり切ったのだ。それは、引退会見でのこの言葉に集約されている。
「うまくいった。うまくいき過ぎたんじゃないかなと思います」
引退して2年。もう一度、訊く。
――今でも「うまくいき過ぎた10年間」だったと思っていますか?
「バーッて投げて、パッと辞めるみたいな。自分らしいなって思っていますけどね」
寡黙だった男らしからぬ擬音を交え、攝津が笑う。選手として限界までグラウンドに立ち続けるのも美しい。でも、潔く散ったことを誇るプロ野球選手の姿も、そこにあった。 《後編に続く》
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。