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「判定、駄目だよ。KOじゃなきゃ!」五味隆典のスカ勝ちにファンは熱狂…デビュー当時を知るカメラマンが激写した“火の玉ボーイ伝説” 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2021/12/29 17:03

「判定、駄目だよ。KOじゃなきゃ!」五味隆典のスカ勝ちにファンは熱狂…デビュー当時を知るカメラマンが激写した“火の玉ボーイ伝説”<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2005年の大晦日に行われたPRIDEライト級GP決勝戦。修斗時代に憧れた「野生のカリスマ」桜井“マッハ”速人との日本人対決で豪快な「スカ勝ち」を決め、五味隆典はライト級の頂点に立った

 試合に勝つと、リングコーナーの最上段のロープにかけ上がり、観客を煽りながら喜びを爆発させる。観客も五味の姿を見ながら拳を突き上げ、嬉しさを分かち合う。どんなに疲れてフラフラになっていても、勝利後に五味は必ずコーナーに登る。私もその様子を真下から撮影するのだが、五味の足元がおぼつかないことがあり、セコンドが必死にパンツのあたりを押さえている。彼がロープからリング上に降りると安堵感が漂い、私と五味のセコンドは「無事でよかった」とアイコンタクトを交す。いつしか、それが我々にとっての“試合終了”の合図となっていた。

「GOMI!」「GOMI!」UFCファンも魅了したスカ勝ち

 五味の最大の魅力は、どんな試合でも最初から全力で勝負することだ。スタミナ配分など考えず、常にフルスロットルでアグレッシブに攻撃する。余計な駆け引きなどせずに、真っ向勝負で相手を叩き潰す。PRIDEでのニックネームは「天下無双の火の玉ボーイ」で、まさしく彼のファイトスタイルそのもの。また勝利後のパフォーマンスでも会場の一体感を煽り、ファンは五味に乗せられ、五味はファンに乗せられて、その結果イベントそのものが否応なく盛り上がることになる。

 2010年3月に五味はUFCデビューした。UFCはラスベガスを中心とした大きな都市で開催されることが多いが、この大会の会場は南西部のノースカロライナ州シャーロットだった。私は現地へ撮影に行ったのだが、「こんな田舎で五味のことを知っている人なんているのだろうか」と不安だった。試合は平日の水曜日で、前日の公開計量から撮影した。メインで試合をする五味が計量に登場すると、場内からは「GOMI!」「GOMI!」の歓声が上がる。試合当日もブーイングではなく、大声援でアメリカのファンに受け入れられた。

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 五味はこの試合では敗れたが、次戦では1ラウンド1分4秒でKO勝利。五味はこのスカ勝ちにより、UFCからノックアウト・オブ・ザ・ナイト(その日の試合で最高のKO勝ちをした選手に贈られるボーナス)を受賞。ファイトマネーとは別に4万ドルを獲得した。勝利後にUFCのケージ(オクタゴン)に登って、主催者から厳重注意を受けるというオマケまでついたが、五味の名声は世界中の格闘技ファンや関係者に完全に浸透していった。

【次ページ】 皇治戦では迷言も「いいキン◯マ持っているよ!」

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