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「判定、駄目だよ。KOじゃなきゃ!」五味隆典のスカ勝ちにファンは熱狂…デビュー当時を知るカメラマンが激写した“火の玉ボーイ伝説”
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2021/12/29 17:03
2005年の大晦日に行われたPRIDEライト級GP決勝戦。修斗時代に憧れた「野生のカリスマ」桜井“マッハ”速人との日本人対決で豪快な「スカ勝ち」を決め、五味隆典はライト級の頂点に立った
五味は所属のジムをK’z FACTORYから木口道場へ変えたことにより、人生の潮目も変わった。新しいジムでのフィジカル面の強化もあり、2001年12月、元同門で先輩の佐藤ルミナとの修斗ウェルター級(当時は-70.0kg)王座決定戦に勝利。初めてのベルトを巻くことになった。2003年8月、ヨアキム・ハンセンに判定負けして修斗のベルトを失うと、五味は活躍の場を世界に広げた。同年10月、ハワイで後にUFC王者となるBJ・ペンと対戦。結果はチョークスリーパーで一本負けだった。
しかし、この連敗が五味の格闘技観を変えるきっかけになったと私は推測する。修斗は1984年に創設された、世界で最も歴史のあるMMA団体だ。修斗時代の五味は、負けられないという意識が強く、どこか窮屈そうで、伸び伸びと試合をすることが出来なかったのではないだろうか。老舗団体の王者という肩書が外れたことにより、歴史や伝統に縛られることなく、自分のやりたい試合、勝ち負けよりも自分の理想とするファイトスタイルを優先する覚悟を決めたような気がするのだ。
KO連発の快進撃でPRIDEのエースに
2004年2月、五味は『PRIDE 武士道 -其の弐-』でPRIDEデビューし、見事1ラウンドでKO勝ち。同年5月にはヘンゾ・グレイシーの実弟で、無敗のハウフ・グレイシーをわずか6秒でKO。その後も五味の快進撃は止まることなく、6試合連続で1ラウンドでのKOまたは一本という「スカ勝ち」を続けた。名実ともに彼はPRIDEライト級(-73.0kg)のエースとなり、「軽量級の試合は面白い」ということを世の中に知らしめた。
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五味の試合で印象的なことは沢山ある。スカ勝ちの内容はもちろんのこと、個人的には彼の試合の前後を鮮明に覚えている。明るい曲調で花道を入場するのだが、目深に被ったフードからチラッと見える五味の表情は、いかにも野性的で恐ろしい。リングコール、インターバル中も五味の表情は厳しいままで、そのテンションが試合終了まで続くのだ。