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「判定、駄目だよ。KOじゃなきゃ!」五味隆典のスカ勝ちにファンは熱狂…デビュー当時を知るカメラマンが激写した“火の玉ボーイ伝説”
posted2021/12/29 17:03
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph by
Susumu Nagao
「大晦日に判定、駄目だよ。KOじゃなきゃ!」
「俺には分かる。夜も眠れねぇはずだ」
「スカ勝ち」
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五味隆典は“自分の言葉”をもった格闘家である。彼の言葉は短く印象的で、メッセージ性があり、聞いたものの脳裏に強烈なインパクトを残す。一度聞くと忘れられない名言ばかりだ。
冒頭の「大晦日に判定、駄目だよ」は、2004年の大晦日のリング上で豪快なKO勝利を決めた後のコメントだった。「俺には分かる」は、2006年の石田光洋戦の選手紹介映像(煽りV)で、石田の心情を読み取ったもの。「スカ勝ち」は、スカッとKOで勝利することで、五味の試合の代名詞にもなっている。
五味は日本のMMAに軽量級を根付かせた立役者として知られている。彼の活躍がなかったら、朝倉兄弟や堀口恭司など、日本の軽量級選手が今ほど注目されることはなかっただろう。
寡黙で控えめだった“火の玉ボーイ”の若手時代
五味は1998年に修斗でプロデビューを果たす。当時のMMAで、細かな体重による階級制を敷いていたのは、日本では修斗だけだった。五味は修斗でデビューから13連勝を収めたが、金髪に染めたド派手なヘアスタイルに比べると、試合は手堅く勝ちに徹することが多かった。13勝のうち9勝は判定勝ちで、一本勝ちが2つ、五味の信条とする「スカ勝ち」は2つだけだった。
2000年2月、私は渋谷PARCOで写真展を開催し、その際に選手を招いてトークイベントも行った。その日のゲストは、修斗のカリスマと呼ばれた佐藤ルミナ。ルミナからの提案により、ジムの後輩である五味もトークに参加した。イベント当日、五味はときおり相槌を打つ程度で、発言することはほとんどなかった。私や先輩の佐藤ルミナに遠慮したのかもしれないが、「五味はプロ選手なのだから、もう少し自己アピールをしてもいいのに」と私は思った。その後も私は五味と一緒にCSの格闘技番組に出演したが、そのときも口数は控えめで、「この選手はプロとしてやっていけるのだろうか」と心配になったほどだった。