猛牛のささやきBACK NUMBER
「長い説教はせず、短い言葉で背中を押す」オリックス中嶋監督が選手に与えた“見放されていないんだ”という安心感
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/30 06:02
オリックスを25年ぶりのリーグ優勝に導いた中嶋監督。2年目の紅林やホームラン王を獲得した杉本らを輝かせる手腕が際立った
K-鈴木は7月に登録を抹消される際、監督に「お前の持ち味はなんだ?」と問われ、ハッとした。
「やっぱり自分の持ち味はまっすぐ。でも前半戦はカットボールに頼っていた部分があって、それがボールになったり、ヒットを打たれたりしていました。『お前の求めるところはそこじゃないだろ。お前はまっすぐやろ。じゃあもっとファームでまっすぐを磨いてこい』と言われました」
K-鈴木は150キロ台後半のストレートに磨きをかけ、9月に一軍に昇格すると、捕手とも「まっすぐで押していこう」と話し合い、打者をねじ伏せた。
3連投をさせなかった投手起用
12球団で唯一、一度も3連投をさせないなど、選手のコンディションを最優先した采配も、終盤の優勝争いを制することができた一因だ。
「もちろん選手に負担をかけないためですし、3連投目にパフォーマンスが落ちるんだったら、それをさせないで、パフォーマンスを上げるほうが、チームのためになるのかなというのがありますから」と中嶋監督。
ただ後半戦は、3連投も辞さない考えで、それは選手にも伝えていた。
「夏以降は(3連投も)『行く時は行く』と言っていました。結果的にそうなった(3連投なく終えた)だけであって、行く気はゼロじゃなかった。ただ、球数がかさんだりした時は絶対やらないですけどね。2日間でどれぐらい投げたとか、3日連続でもし行ったとしても、何球ぐらいで終わるとか、そこまでは計算していました」