猛牛のささやきBACK NUMBER
「長い説教はせず、短い言葉で背中を押す」オリックス中嶋監督が選手に与えた“見放されていないんだ”という安心感
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/12/30 06:02
オリックスを25年ぶりのリーグ優勝に導いた中嶋監督。2年目の紅林やホームラン王を獲得した杉本らを輝かせる手腕が際立った
守護神の平野佳寿は、優勝争いの最中でも、2連投の翌日はベンチから外した。
「平野の場合は(シーズン序盤に離脱した)故障箇所のことが気になっていたので。そこがまた出てしまったら長くなるというのがあったから」
そう説明しながら、記者陣にこう文句を言った。
「みんなが、3連投しないって書くから、俺(3連投なしで最後まで)やんなきゃいけねーのかなーと思って、結構プレッシャーかかったんやけどなあ。3連投したらあかんって、みんな書きすぎるからさー(笑)」
ソフトバンクと優勝争いを繰り広げた2014年は、8回佐藤達也、9回平野の勝利の方程式や、比嘉幹貴、岸田護、馬原孝浩ら鉄壁のブルペン陣が快進撃の原動力だった。その年の8月30日には、「7回終了時点でリードしている試合は100連勝」という金字塔を打ち立てた。
だがその年は佐藤が67試合、平野、比嘉が62試合に登板するなど負担が大きすぎた。疲れが出た終盤戦でサヨナラ負けが増えたり、CSでもリリーフ陣が捕まった。
今年のチームの最多登板は、富山凌雅の51試合。シーズン終盤はブルペン陣の踏ん張りに助けられた試合も多かった。
指揮官の信念と我慢強い采配が最下位だったチームを頂点へと導いた2021年。だが栄光を1年だけで終わらせるつもりはもちろんない。
日本シリーズに敗れ、今年の全ての試合を終えた後、中嶋監督は選手たちに言った。
「来年、リーグ連覇できるのは俺たちしかいない」
短く、深く刺さる言葉を胸に、選手たちは2022年の戦いに備えている。