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《24歳で戦力外→巨人と育成契約》都立の星・鈴木優の心を支えた、宗佑磨との友情「優がいないと寂しいし、悲しい」
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byTaichi Chiba
posted2021/12/28 11:10
巨人と育成契約を結んだ鈴木優投手。オリックスの元チームメイトたちの活躍は刺激になったと語った
しかし、鈴木が選んだのは巨人での再スタートだった。担当者から「巨人にはいないタイプの投手だし、いろんな経験もしているので期待している」と声をかけてもらった。
12月10日には正式に育成契約を結び、すでにジャイアンツ球場で汗を流す日々が始まっている。新たに背負うのはオリックス時代から愛着のある「68」にゼロを一つ足した「068」だ。その決断の裏には、日本シリーズで名前を売った同期の存在がある。
パ・リーグ制覇に貢献し、ゴールデン・グラブ賞にも輝いた宗佑磨(25歳)とは同期入団。「ずっと一緒にいた」というほど交流を深め、鈴木の退団を誰よりも悲しんでくれたのは電話越しで泣きそうになっていた宗だった。
「宗は『優がいないと寂しいし、悲しい』と言ってくれました。高校時代からよく試合をした仲でしたし、寮に入ってからもよく僕の部屋にいた。オフの日は一緒に映画に行ったり……だから今回の活躍は素直に嬉しかったんです。それに、何より痺れたのは、ヤクルトの清水(昇)との対決。清水も同学年で、帝京高校時代からよく知っています。彼は大学を経由してここまで辿り着いた。立場が逆転してしまいましたね。そんな2人が日本シリーズで対戦しているんですから、刺激を受けないわけがないですよ」
同期やチームメイトの活躍は嬉しかった。この言葉には偽りはない。ただ、鈴木が唯一「複雑な心境」と振り返るのは、リーグ優勝後の胴上げシーンだった。
「テレビで見た時に、『ああ、自分もあの場所に立てるチャンスがあったのにな』と……。全く一軍に絡めていなかったらそうは思わなかったかもしれませんが、序盤戦はチャンスをもらっていた。それを活かせなかったのは自分が悪い。わかっているんですけど、胴上げを見て、結局そこにいないと意味がないと思ったんです。自分が投げて優勝させたと言えるぐらいじゃないと、本当の意味で喜びは感じられないんだなと」