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野球のぼせもんBACK NUMBER
元ソフトバンク→京大新監督・近田怜王(31歳)が語る”頭脳派集団の洗礼”「聞いたこともない言葉が次々に」「みんな仮説を必ず立てます」
posted2021/12/28 11:05
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
初めは二足のわらじだった。
今年11月、京都大学野球部の監督に就任した近田怜王。助監督となった2020年9月以降、勤務先のJR西日本から京大野球部への出向扱いとなったが、それまでは鉄道マンとして働きながら休日に京大の指導に足を運ぶという生活を送っていた。
17年1月から京大野球部の指導を始めたが、当初は「週1回」という約束だった。しかし、それがすぐに週2回に、気づけば週に3、4回へ瞬く間に通う頻度が増えていった。
「彼らが僕を上手に乗せてくれて、どんどんのめり込んでいきました」
学生たちから「聞いたこともない言葉が次々に」
当初、近田は“洗礼”を受けた。グラウンドを訪れると、京大野球部の彼らは毎回のように数々の質問を投げかけてきた。
「それが結構難しくて。『あの関節とこの関節の連動性を高めるには○○○筋と△△△筋だと僕は考えているんですけど、特にどちらを意識すればいいですか』とか、筋繊維がどうとか、関節とか体の部位とか。とにかく細かいものばかり。僕がそれまで考えたことも、聞いたこともないような言葉が次々飛んできました」
何も答えられなかった。「次来るまでに回答を持ってくるから」と約束して帰路に就く。当時は兵庫県の甲子園口駅近くにある社員寮に住んでいた。
鉄道マン&野球部指導の“特殊な両立”
片道約2時間。
列車に揺られながらスマホで必死に調べて、帰宅してからノートに書いて整理した。
「駅員って勤務時間が特殊なんです。例えば月曜の朝9時に業務が始まったら、終了が火曜の朝9時半。水曜日は丸1日休みで、木曜日の朝から金曜日の朝まで働く。その繰り返しです。だから最初は休日に通ったんですけど、『次』を先延ばしにすると、彼らの成長がその分遅れてしまう。チャンスを逃すのは可哀想だと考えるようになり、朝に勤務が終わった後も出向くようになった。睡眠は移動中の電車でとってました」