フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「インスタの写真に悩む道化ではない」「では訊くが、愛とは何だ?」キャリア終盤のイブラヒモビッチがこだわる等身大の人生とは
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/12/11 17:01
PSG時代のイブラヒモビッチ。ビッグマウスに暴言など「悪童」にふさわしい言動は多いが、ファンには熱烈に愛された
――あなたは傲慢ですか、それとも自惚れ屋なのでしょうか?
「言うなれば僕は自信家だ。傲慢でも自惚れ屋でもない。無知な人間は傲慢というだろうが、知性あるものは自信家と呼ぶだろう」
――自分が特別だと思われるのは楽しいですか?
「僕は特別じゃない。ノーマルだ」
――しかしあなたの物語とキャリアが、あなたを特別な存在にしてはいませんか?
「それもまた別のことだ。人は誰もがノーマルな存在だ。それぞれが自分の流儀を持ってはいるが、奥底は誰もが同じだからだ」
プロフェッショナリズムと私生活
――あなたは行動様式とパーソナリティで、自分の欠点を隠そうとしてませんか?
「僕のようなレベルに達したときには選択の余地はない。僕は世界中の人々と、自分の人生を分かち合うためにここに辿り着いたわけじゃない。僕はプロのサッカー選手で、分かち合いたいと思うものを分かち合う。僕は朝起きたときに、インスタグラムに投稿するおはようの挨拶の写真をどれにしようかと思い悩む道化ではない。プロフェッショナルな日常の出来事を分かち合いたいと思っているだけだ。僕には僕の私生活があり、それはとても大事だ。そこを誰かと分かち合いたいとは思わない。だがプロフェッショナルとしての人生を分かち合うのは、それもまた仕事であるからで何も隠し事はしない。繰り返すが私生活は僕だけのものだ」
――あなたは自信について語りましたが、自信を得るのはあなた自身のなかにある弱さや脆さを隠すためでもあるのでしょうか?
「違う。自信があれば自分のすることや自分自身を信じられる。それが自分を作りあげる。恐らくアドバンテージにもなるし心地よくも感じられる。何かを隠すためではない。自信とは精神の状態であって弱さの問題ではない。ひとつの能力であり力だ」
――自分の弱さを行動様式で抑え込んでいるとは思いませんか。それはあなたが少年時代を過ごしたローゼンゴード(マルメの市街にある移民が多く住む居住区)では、《弱虫》と言われるのが最大の侮辱だったことが記憶に残っているからですか。脆さは《弱虫》と同じではないですか?
「それは違う。たしかに僕にはある種の脆さがある。感情もあるし弱さも悪いところもある。僕は超人ハルクでもスーパーマンでもない。あなた方には僕がピッチの上でもピッチを離れても、常に自信満々でいるように見えるかも知れない。でも僕にも弱く脆いところもあるんだ。それが自然だろう」