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「過ちは消えるものじゃないですが」問題児だった男が口にした“恩返し”…東京五輪世代・邦本宜裕24歳が韓国で勝ち取った信頼
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJeonbuk Hyundai Motors
posted2021/12/09 11:02
全北現代のリーグ5連覇に貢献し、Kリーグベストイレブン候補にもノミネートされた邦本宜裕
さらにチームメイトから学ぶ謙虚さも身に着いた。
「全北現代には韓国代表の選手が多くて、うまいプレーヤーばかりなので、盗めるものはすべて盗もうと思っています。特に左利きで同じポジションのMFキム・ボギョン(Jリーグはセレッソ大阪、柏レイソルなどでプレー)選手なんかは、ボールさばきや意外性のあるパス、ボールを持っていない時のプレーなどすごく参考になります。とにかく毎日が勉強です」
韓国での4年で邦本は確実に成長していた。
全北現代で2年連続リーグ制覇を経験し、来季はACLでJリーグのチームと再び顔を合わせることもあるだろう。そして「日本でも自分をアピールしたい」と思うのは、その先に「日本代表に選ばれたい」という夢があるからだ。
「まだ自分はそこに立てる選手ではないです。どのチームでも試合に継続して出て、活躍していれば、いつかは見てくれると思います。日本代表のユニフォームを着て、いつかピッチに立ってみたい」
もちろん韓国での活躍は、日本にも届いているだろう。彼の才能に疑いの余地はない。あとは日本代表の森保一監督が無視できないほどの結果を残すだけだ。
それでも邦本は、「自分が活躍しようっていう考えはないんですよ」と笑う。
「ほかの人が活躍できるために、ほかの人の分も動き回って、相手の体力を削って誰かが点を取ってくれたらいいなって思っています。一方で、自分がアシストでなくても、その前のパスは絶対に出すぞっていう気持ちはあります。もちろん点を取りたいっていう気持ちがないわけじゃありませんが、それを抑えて自分に何ができるかを常にピッチの上では考えています」
少しの沈黙のあと、邦本は思い出すように言葉をつけ加えた。
「あ、でもこう言ったら(全北の)監督にもっとゴールを狙えって、怒られそうですけれど(笑)」
“お世話になった人”たちへ、邦本からの“恩返し”はこれからだ――。