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「過ちは消えるものじゃないですが」問題児だった男が口にした“恩返し”…東京五輪世代・邦本宜裕24歳が韓国で勝ち取った信頼

posted2021/12/09 11:02

 
「過ちは消えるものじゃないですが」問題児だった男が口にした“恩返し”…東京五輪世代・邦本宜裕24歳が韓国で勝ち取った信頼<Number Web> photograph by Jeonbuk Hyundai Motors

全北現代のリーグ5連覇に貢献し、Kリーグベストイレブン候補にもノミネートされた邦本宜裕

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キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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Jeonbuk Hyundai Motors

 今年8月、東京オリンピック(五輪)が盛り上がりを見せる頃、邦本宜裕(くにもと・たかひろ)はチームメイトからこう言われた。

「日本代表の試合は見ないの?」

 一瞬、返事に困ったがキッパリと言った。

「俺は見ないよ」

 ただ、内心では結果が気になっていた。「1試合だけちゃんと見ておこうか……」。

 テレビをつけた。日本対スペインの準決勝は前後半90分を終えて0-0。延長戦では後半にゴールを奪われて0-1で敗れた。それでも同世代の奮闘する姿に刺激を受けないわけがなかった。

「正直、試合はそこまで見たくはなかったんです。五輪代表に自分が選ばれないのはしょうがないことですけれど……。でも今まで一緒にプレーしたことがある選手たちが、テレビの前で日本代表のユニフォームを着て、日の丸を背負って戦う姿は頼もしくもあり、個人的には悔しくもありました。自分だったらもっとこういうプレーをして、絶対に点獲れるなって気持ちにもなりましたから」

 自分に正直なのは、もっとサッカーで成功したい気持ちが強いからに他ならない。

「同い年の選手に成長したなって思ったり、それを直接伝えたくはないんですけれど(笑)。でも欧州クラブでプレーしたり、五輪でもスペインと互角に渡り合っていて、本当にすごいなって思いました。今はまだ自分のほうが下にいますが、いつか上に行けるようにがんばろうという気持ちでいます」

 リモート取材の画面越しからだが、“サッカー小僧”の面影が少し垣間見えた気がした。

Kリーグ挑戦4シーズン目

 邦本は今、韓国のKリーグ1(1部)の全北現代モータースに所属している。2シーズン目を終えたばかりだが、2018年から慶南FCでプレーしているため、韓国生活は今年でもう4年が経った。

「最初は言葉の壁があって苦労しました。先輩・後輩の関係性とかにも苦労しました(笑)。でももう慣れましたよ」

 コロナ禍が続く今は、グラウンドと寮の行き来が基本的な行動パターンだ。「寮なので食事はすごく助かっています。本当においしいんですよ。肉料理が多いですね。たまに辛すぎるのには困りますが(笑)」と笑顔を見せる。

 チームメイトには元アルビレックス新潟の韓国代表DFキム・ジンスがいて、「日本語がすごく上手で、試合中の指示までお互いに日本語なんですよ」と教えてくれた。

 会話から充実した生活ぶりがとてもよく伝わってくる。何よりも邦本自身が韓国での生活を楽しんでいるのだと感じた。その理由は、彼がチームに必要とされ、それに応える結果を出しているからだろう。

【次ページ】 「優勝9回の強豪クラブ」の助っ人

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